担い手減る「食料基地」が求める政府の関与 コメ農家、募る不安
「先の見えない不安がある」――。
札幌市内から高速道で北上して1時間余り。かつて炭鉱の街として栄えた北海道美唄市で、37年間にわたって農場を経営する今野守さん(58)はつぶやいた。
米の小売価格が高騰した「令和の米騒動」は収束の兆しが見えず、小泉進次郎農相が先頭に立つ農政も針路は定まらない。
不透明な情勢が続く中、米生産者の経営環境は依然として厳しく、道内の米生産者も減少傾向が続く。
農林水産省北海道農政事務所によると、道内の米生産者数は2010年、1万5910軒だったが、20年には約3割減となる1万843軒となった。
同事務所の担当者は「高齢化などに伴い、平成以降は減少傾向にあり、この傾向は米生産者に限らず、農業全般の傾向となっている」と指摘。我が国の農地面積の4分の1を有し、「日本の食料基地」とも言われる北海道だが、その担い手は確実に減少している。
今野さんは約34ヘクタールの農場を所有。その広さはプロ野球・日本ハムファイターズの本拠地「エスコンフィールド北海道」のおよそ七つ分にあたる。このうち約10ヘクタールで主食用米と飼料用米を栽培する。
父の跡を継いだ当時は5ヘクタール強の農地だったが、北海道のスケールメリットを生かそうと、少しずつ農地を買い増してきた。
30ヘクタールを超えた10年ほど前から経営も安定してきたが、それまでの経営は決して楽ではなかったという。
天気を相手にする仕事であり、収穫のチャンスは年に1回しかない。
それに失敗すれば、トラクターなど初期投資の借金を返済することができなくなってしまう。
うまく収穫できても大きな収益を上げることは難しい。
今野さんも農業1本では生活が成り立たず、冬は除雪のアルバイトをして家計の足しにしてきた。農協への借金返済の見通しが立たなくなり、農協に肩をたたかれて土地を売り、借金を清算して離農する人を何人も見てきたという。
減反政策は18年に廃止されたが、事実上の生産調整は続いており、農水省はいまも転作する農家に補助金を出している。
補助金を受け取っているという今野さんは「水稲だけを作って頑張ってきた方もいっぱいおられるが、うちはちょっと無理だった。農家の経営を1年でも長く続けたいと思うならば、国の政策に乗らないと厳しかった」と打ち明ける。
今回の米騒動で、農協の買い取り価格も上昇した。
その恩恵も受けるが、備蓄米の放出で一転して安値で止まる恐れもある。仮に安値が続けば農家が困り、逆に高値になれば消費者が困る。
だからこそ、今野さんは農産物を安定供給できるよう、政府の一定の関与が必要だと考える。
「政府が価格を維持したり、農家の所得を補償したりしなければ、農家の不安は消えない。食料自給率向上のためにも、与野党に関係なく考えてもらいたい」
食への不安を解消する政策がいま求められている。【高山純二】
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