東西格差、難民の凶悪事件を背景に 独第2党躍進の「極右」AfD

2025/02/24 20:33 

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 23日に投開票されたドイツ総選挙で、移民・難民政策の厳格化を主張する中道右派の野党統一会派「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」が第1会派となり、「極右」政党「ドイツのための選択肢(AfD)」も大きく躍進した。背景を探った。

 不法移民・難民の入国阻止や強制送還の徹底などを掲げ「極右」とも称されるAfDが、現有議席の2倍近い議席を獲得して第2党に躍り出た。この「歴史的な結果」(ワイデル共同党首)は国内外に衝撃を与えた。

 過去にナチスを生んだ反省から排外主義を厳しく戒めてきたドイツで、なぜAfDは躍進したのか。直接的な要因は、国内で難民による無差別殺傷事件が相次ぎ、治安悪化への不安が急速に高まっていることだ。

 昨年5月に西部マンハイムで、反イスラムの集会が刃物で襲撃され、警察官1人が死亡。同8月には西部ゾーリンゲンで、イベントの来場者が刃物で襲われ、3人が犠牲になった。容疑者はそれぞれアフガニスタン、シリアからの難民の男性だった。

 さらに、事実上の選挙期間に入った同12月、東部マクデブルクのクリスマスマーケットでサウジアラビア出身の男性が運転する車が暴走して6人が命を落とすと、移民・難民対策が、景気低迷に対する経済政策を押しのけて選挙の最大の争点に浮上した。

 「(移民・難民による)事件が増え、私たちの国は変わってしまった」。今年2月、西部フランクフルトであったAfDの選挙イベントに参加した女性(64)は語気を強めた。同様に感じる有権者は増えており、長年にわたり反移民・難民政策を唱えてきたAfDは共感を得られやすい存在となった。こうした世相はAfDにとって「独自の戦略は必要なかった」(独誌シュピーゲル)ほど有利に働いた。

 また、AfDは旧東ドイツで特に支持されており、今回もベルリン州を除く旧東独5州全てで得票率が最も高かった。

 背景にあるのが、1990年の東西ドイツ統一後も残る東西格差だ。独紙ツァイトによると、旧東独地域でフルタイムで働く人の平均年間給与は2022年に約4万5000ユーロ(約704万円)で、旧西独地域の5万8000ユーロ(約907万円)と開きがある。

 社会学者のデトレフ・ポラック氏は、独紙フランクフルター・アルゲマイネへの寄稿で、この格差は旧東独地域の人たちの「劣った地位にあり、冷遇され、認められていない」という心理につながっていると指摘した。こうした社会ではポピュリズムが浸透しやすいという。

 ドイツでは景気低迷も続き、人々の不満が高まっている。現状を変えたいという欲求が、AfDを押し上げた可能性がある。野党第1党となる見込みのAfDについて、ツァイトは「議会活動での組織的な発言力を相当高めるだろう」と指摘している。【ベルリン五十嵐朋子】

毎日新聞

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