「無期限に進展ない議論を続けるのか」 NPT準備委で被爆者演説

2025/05/01 09:17 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 米ニューヨークの国連本部で開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議の第3回準備委員会で4月30日、被爆者の金本弘さん(80)=名古屋市=が演説した。「『核のタブー』の衰退が懸念される世界の中で、NPT再検討会議の役割に大きな期待を寄せている」と述べ、協議の前進を切望した。

 生後9カ月で広島の爆心地から2・5キロの地点で被爆した金本さんは、2024年のノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)で代表理事を務める。演説では原爆で失った家族に触れ、「戦争反対、核兵器廃絶運動をする使命を感じている」と被爆80年を迎えての決意を改めて強調。NPTの下で核軍縮の進展がない現状に「無期限に進展のない議論を続けるのか」と怒りをぶつけた。

 この日の会合では広島、長崎両市長もそれぞれスピーチした。広島市の松井一実市長は各国政府の代表に向け、核抑止力への依存からの脱却を求め、「平和を願う市民社会の声に耳を傾け、対話による平和的解決に向けた外交政策への転換」を促した。長崎市の鈴木史朗市長は「人類が核兵器のリスクから逃れるための唯一の手段は『廃絶』しかない」とした上で、「長崎を最後の戦争被爆地に」と訴えた。

 準備委員会の会期は9日まで。ロシアのウクライナ侵攻などで安全保障環境が悪化する中、来年の再検討会議での合意形成につなげられるかが焦点となる。【ニューヨーク八田浩輔】

毎日新聞

国際

国際一覧>