NPT準備委が閉幕 勧告案採択できず 体制の空洞化に危機感
ニューヨークの国連本部で開かれていた核拡散防止条約(NPT)再検討会議の第3回準備委員会が9日に閉幕した。核保有・依存国における分断を背景に、2026年の再検討会議に向けた勧告案は採択できなかった。
ロシアのウクライナ侵攻や中国の急速な核戦力拡大など核を取り巻く国際環境は厳しさを増す。会期中にはNPT非加盟国である核保有国のインドとパキスタンの武力衝突が発生し、核軍縮・不拡散体制の柱であるNPT体制の空洞化に危機感が募る。
約2週間にわたった会合で、核兵器を保有する大国はNPT体制の重要性に触れつつ、互いに名指しで非難の応酬を繰り広げた。米国は、中国の「急速で不透明かつ不安定な核戦力の拡大」に深い懸念を表明。ロシアに対しても北朝鮮との軍事協力を巡る国際法違反に改めて警鐘を鳴らした。
一方、中国は米英豪の安全保障枠組み「AUKUS」の原子力潜水艦に関する協力は「核拡散の深刻なリスクをもたらす」と批判した。非核保有国からは核共有や核抑止の再考を促す意見表明があったが、北大西洋条約機構(NATO)加盟国などはNPTとの整合性を強調して擁護した。
最終日には、米露に唯一残る軍縮の枠組み「新戦略兵器削減条約(新START)」の失効(26年2月)を踏まえた新たな交渉を早急に始めるよう両国に促す24カ国の共同声明をオーストリアが代表して読み上げた。
軍縮会議日本政府代表部の市川とみ子大使は「コンセンサス形成の難しさはあるが、日本として引き続き対話と協調を唱えながら来年の再検討会議に向けて取り組みたい」と総括した。日本は軍縮・不拡散教育への取り組みを促進する共同声明をまとめ、96カ国の賛同が集まった。
NPTは米露英仏中の5カ国に核兵器を持つことを認める代わりに、核軍縮の交渉に誠実に取り組むよう義務づける。5年ごとに進捗(しんちょく)などを確認する再検討会議を開く。今回は、来年の再検討会議前の最後の準備委だった。
次回の再検討会議は来年4月27日~5月22日にニューヨークで開かれる。議長国はベトナムが務める。過去2回の再検討会議では最終合意文書を採択できず、NPT体制の立て直しは正念場を迎えている。【ニューヨーク八田浩輔】
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