ポーランドやドイツ、軍備を大幅増強 背景にロシア軍の軍備拡張

2025/06/03 19:17 

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 ロシアの軍備拡張の脅威から、ポーランドやドイツが防衛力の増強を急いでいる。ポーランドは今年、北大西洋条約機構(NATO)加盟国で唯一、防衛費が国内総生産(GDP)の5%を超える見通しだ。ドイツもロシアに隣接するリトアニアに新たに自国軍部隊を常駐させるなど、露軍への警戒を強めている。

 ポーランドは、ロシアがウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合した2014年以降、兵力の増強を続けてきた。14年時点で約9万9000人だった兵員数は24年に約21万6000人に達した。

 約20万4000人のフランスを抜き、NATO加盟国では米国、トルコに次ぐ規模となった。ポーランド政府はさらに、予備役なども含めて約50万人に増強する目標を掲げている。

 装備の増強も急ピッチで進める。ポーランドは現在約470台の戦車を保有しており、各210台前後の英仏独を大きく上回る。22年には韓国製戦車約1000台の調達も決め、今後、配備を進める。さらに、35年までに米国製F35など戦闘機計150機、攻撃ヘリコプター100機以上を調達する計画だ。

 兵力の増強を急ぐ背景には、ウクライナ侵攻を続けるロシアの軍備拡張がある。

 ベルギーに拠点を置くシンクタンク「ブリューゲル」と、ドイツのキール世界経済研究所の報告書によると、ロシアは24年に、22年比で兵器の生産量を戦車で2・2倍、装甲車などは1・5倍、攻撃型無人航空機(ドローン)は4倍以上に急拡大した。

 また、30年までには兵士を約30万人、戦車を約3000台、戦闘機を約300機増強する計画だ。

 露軍はウクライナ東部で占領地を拡大しており、近接するポーランドの危機感は高まっている。

 一方、ドイツも兵力増強を加速させる。メルツ首相は5月14日、連邦議会(下院)での所信表明演説で、独連邦軍を「欧州で最も強い軍隊」とするため、あらゆる財政的手段を講じると表明した。

 NATOの対露防衛の弱点とみられているバルト3国のリトアニアへの駐留も開始した。27年までに兵員約4800人、戦車を含めた戦闘車両約2000台などを展開する。

 ロイター通信によると、NATOでは現在、加盟国が提供する兵力の目標を計80旅団(各5000人程度)としているが、これを約1・5倍の120~130旅団に引き上げる構想が議論されている。

 ドイツは21年に10旅団の提供を決め、現在、リトアニア駐留分を含めて9旅団を提供している。NATOはさらに7旅団計4万人規模の追加をドイツに求める見通しだ。ただ、独連邦軍は18年に設定した兵力目標計20万3000人にも到達しておらず、兵員の確保は高いハードルとなる。

 米国がNATOへの関与を弱めた場合、さらに欧州各国の負担は大きくなる。6月24日からオランダ・ハーグで開かれるNATO首脳会議では、現在GDP比2%に設定されている加盟国の防衛費目標の引き上げが議論される見通しだ。

 ドイツは24年にこの目標を達成したばかりだが、ワーデフール外相は5月のNATO非公式外相会合で、トランプ米大統領が求めるGDP比5%への引き上げを支持する意向を表明している。【ブリュッセル宮川裕章、ベルリン五十嵐朋子】

毎日新聞

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