軍事費増が国際協力を「阻害」 国連がSDGs投資への振り分け提案

2025/09/10 10:01 

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 国連は9日、世界的な軍事費の増加傾向が、各地の開発努力や国際協力を阻害していると指摘する報告書を発表した。グテレス事務総長は「過剰な軍事費は平和を保証しない」と述べ、加盟国に持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた投資に振り向けるべきだと促した。

 報告書が引用したストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の推計によれば、2024年に世界の軍事費は2兆7000億ドル(約398兆円)を超え、金額、増加率ともに冷戦後最大を記録した。安全保障環境の不安定化を受けて、35年には最大6兆6000億ドルに膨らむと予測されている。

 一方、30年を期限とするSDGsは達成が見込めるターゲットは2割弱にとどまり、資金不足を背景に足踏みが続く。途上国へのSDGs投資の不足額は世界全体で年4兆ドルに達し、今後数年の間に1・5倍以上に拡大する可能性がある。

 報告書では、軍事費の増加は、医療や教育、ジェンダーをめぐる格差の拡大や環境破壊などを通じてSDGsの進展を圧迫すると指摘。一方、世界の軍事費の4%を投じれば、目標の一つである飢餓を終わらせることができるとした。同様に15%分を割けば、途上国が気候変動に適応するための費用をまかなえると訴えた。

 グテレス氏は、報告書を発表した記者会見で「より安全な世界は、戦争への支出と同じ以上の資金を貧困対策に投じることから始まる」と述べた。同席した中満泉事務次長(軍縮担当上級代表)は「安全保障は兵器だけで築かれるものではない」と述べ、「地球規模での(資金の)優先事項を見直すことは任意の選択ではない。人類の生存に不可欠な課題だ」と強調した。【ニューヨーク八田浩輔】

毎日新聞

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