ガザ和平案で唯一名前が挙がったブレア元英首相 なぜ関与した?

2025/10/02 17:12 

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 米国が発表したパレスチナ自治区ガザ地区の和平計画で、戦闘終結後に暫定統治を担う機関のメンバーとして唯一名前が挙がったのが、ブレア元英首相だ。これまでもガザの戦後統治のあり方などについてトランプ米大統領らと協議していたブレア氏。なぜ、どのように、和平計画に関わってきたのか。

 和平計画によると、イスラエルとイスラム組織ハマスの双方が受け入れて戦闘が終結すれば、政治的に中立なパレスチナ人らで構成する委員会が暫定的にガザを統治する。トランプ氏がトップを務める「平和評議会」がその委員会を監督・指導し、ブレア氏は評議会のメンバーに入る。「他のメンバーと各国首脳」は後日発表されるという。

 ブレア氏は9月29日の声明で「平和評議会を率いるという彼(トランプ氏)の意思は、ガザの未来や、イスラエル人とパレスチナ人が平和への道を見いだす可能性に対する支援と信頼の大きな表れだ」と述べた。

 1997年から英首相を務めたブレア氏は、2007年に退任したその日に、米国、ロシア、国連、欧州連合(EU)による中東和平4者協議(カルテット)の特使に就任した。中東和平の実現を目指し、将来のパレスチナ国家の基盤となる政府組織の整備や経済発展の支援に取り組んだ。14年にイスラエルとハマスの戦闘が起きた際には、停戦の仲介にもあたった。

 だが、「和平促進に向けた劇的な変化をもたらすことに苦戦」(AP通信)して、15年に特使を辞任した。

 英メディアによると、その後もブレア氏は自身が設立したシンクタンクを通じて、パレスチナ自治政府やアラブ諸国の政府に統治や経済改革などについて助言し、ビジネス面も含め中東への関与を続けた。人脈が広がり、イスラエルのネタニヤフ首相とも関係が良好とされる。

 また、トランプ氏の娘婿で、第1次トランプ政権では中東政策を担当したクシュナー元大統領上級顧問とも親交を深めた。クシュナー氏は今回の和平計画の策定に携わった。

 ブレア氏は1年以上、ガザの戦後構想を練っていたといい、7月にはウィットコフ米中東担当特使と会談。8月下旬には米ホワイトハウスでトランプ氏、クシュナー氏らと将来のガザ統治などについて協議した。国際的な信託統治を提案したとみられる。

 英紙フィナンシャル・タイムズは9月30日、米国の和平計画について、アラブ諸国と英仏両国、ブレア氏がそれぞれ検討していた案を集約したものだと報じた。パレスチナ人委員会による統治はアラブ諸国、国際監督機関(平和評議会)はブレア氏が提案し、「国際安定化部隊」の派遣などは英仏の構想だという。

 トランプ氏は29日、ブレア氏を「とてもいい男だ」と持ち上げた。

 一方で、ブレア氏には中東での苦い失敗もある。首相時代の03年、フセイン政権が大量破壊兵器を保有しているという誤った情報を基に、米国が始めたイラク戦争に参戦。国内外で批判を浴び、首相辞任につながった。アラブ諸国の人々の間では今でも反感が強いといわれる。

 国連のパレスチナ被占領地域に関する特別報告者アルバネーゼ氏は、ガザ戦後統治へのブレア氏の関与が報じられると、X(ツイッター)に「ブレア? ありえない。パレスチナに手を出すな」と投稿した。

 ブレア氏の具体的な役割は不明だが、元英外務省事務次官で英王立国際問題研究所のサイモン・フレーザー議長はBBC放送に「ガザの将来の監督には幅広い基盤が必要で、米英の事業のように見えることがあってはならない」と語っている。【ロンドン福永方人】

毎日新聞

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