ノーベル平和賞の最新予想 人道支援団体が有力か トランプ氏は?

2025/10/04 09:39 

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 ノーベル平和賞が10日に発表されるのを前に、欧州の研究機関やメディアが相次いで受賞者・団体の予想を出している。パレスチナ自治区ガザ地区やウクライナなどで戦火が続く中、紛争地での人道支援や報道の自由に尽力してきた国際機関・団体などへの授与が取り沙汰されている。一方、平和賞を熱望するトランプ米大統領の受賞可能性を巡る議論もかまびすしい。

 ただ、昨年は有力候補にほぼ挙がっていなかった日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が受賞した。今年も予想外の候補が選ばれる可能性はある。

 2023年にイランの女性人権活動家ナルゲス・モハンマディさんの受賞を的中させたノルウェーの民間研究機関・オスロ国際平和研究所(PRIO)は、9月18日に最新の予想を発表し、5候補を列挙した。

 筆頭候補は、言論弾圧を監視してジャーナリストを支援する国際NGO「ジャーナリスト保護委員会」(本部・米ニューヨーク)。PRIOのグレーガー所長は、24年に124人の報道関係者がイスラエルのガザ攻撃などで殺害された現状を説明した上で、「(受賞すれば)ジャーナリストが世界に情報を伝えることを妨げられれば、平和と民主主義が危機に陥るという強力なメッセージになる」と指摘した。

 その他の4候補は、内戦下のアフリカ北東部スーダンの人道支援団体「スーダンの緊急対応室」や、世界最古の女性平和団体「婦人国際平和自由連盟」(本部スイス・ジュネーブ)など。

 ロイター通信は、複数の専門家の予想を基に、人道支援団体を有力視する。特に、トランプ政権による援助削減などの影響で活動が困難になっている国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連児童基金(UNICEF)などを挙げた。

 このほか、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)やガザで活動する市民団体の受賞を予想する識者もいる。

 トランプ氏の受賞の見込みに関する報道は多いが、否定的な見方が大勢だ。

 ロイターは、トランプ氏がノーベル賞創設者アルフレッド・ノーベルの遺言にある受賞要件を満たしていないとするグレーガー所長の指摘を紹介。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの脱退表明や高関税措置で同盟国などに「貿易戦争を仕掛けた」ことなどを理由に、ノーベルが示した「国家間の友好のために最大または最善の貢献をした人物」には当たらないと見ているという。

 一方、紛争が絶えない世界情勢や、トランプ氏への授賞を巡る論争を踏まえ、「該当者なし」となる可能性を唱える識者もいる。「該当者なし」は戦後6回あり、最後は1972年だった。

 平和賞は各国の政府や国会議員、大学教授、国際機関の職員らに推薦された候補者の中から、ノーベル賞委員会(5人)が選出する。今年は計338候補(個人244、団体94)に対する推薦があった。賞金は1100万スウェーデンクローナ(約1億7000万円)。【ロンドン福永方人】

毎日新聞

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