米政権、国際刑事裁判所に圧力か トランプ氏らの訴追免除を要求
トランプ米政権が国際刑事裁判所(ICC、赤根智子所長)への圧力を一段と強めている。ロイター通信は10日、米政権がトランプ大統領や政権幹部の訴追免除を確実にするため、ICC設立条約の「ローマ規定」の改定を水面下で求めていると報じた。応じなければ職員のみならずICCそのものにも制裁を科す構えだという。
報道によると、米政権はパレスチナ自治区ガザ地区の戦闘を巡る戦争犯罪容疑で逮捕状が出ているイスラエルのネタニヤフ首相らの捜査打ち切りも要求しているという。
ローマ規定はICCが管轄する対象犯罪や管轄権を行使できる条件などを定めている。加盟国は規定に従う義務がある。改定にはICCの加盟国125カ国の3分の2の支持が必要だ。米国やイスラエルは非加盟で改定に直接的に関与する権利はない。
ロイターによると、米国の法曹界では、トランプ氏が退任する2029年1月以降、トランプ氏やバンス副大統領、ヘグセス国防長官らがICCの捜査対象になるという臆測があるという。
トランプ政権は9月以降、「麻薬対策」を名目に南米ベネズエラの周辺で「麻薬運搬船」とみなした船の爆撃を繰り返し、乗員80人以上を殺害。国内外の専門家から「国際法違反」との指摘が上がっている。
トランプ氏は2月にICC職員らへの制裁を可能にする大統領令に署名した。ネタニヤフ氏の逮捕状発行やアフガニスタンで米軍人の過去の戦争犯罪の捜査に関与した裁判官や検察官ら職員9人に制裁を科している。
戦争犯罪や人道に対する罪などに関わった個人を国際法に基づいて訴追、処罰するICCの設立規定に特定の人物の訴追免除を盛り込めば法の支配の原則は大きく損なわれる。一方で、米政権がICCそのものを制裁対象とすれば、職員の給料を支払う銀行口座へのアクセスが制限されるなど運営に多大な影響が出る可能性がある。【ワシントン金寿英】
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