単年度でのPB黒字化目標を見直し 高市首相、転換で積極財政へ

2025/11/07 19:59 

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 衆院予算委員会で7日、高市早苗首相と全閣僚が出席する基本的質疑が始まった。首相は、財政健全化の指標となる国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を巡り、「単年度ごとに達成状況を見ていく方針を、数年単位でバランスを確認する方向に見直すことを検討している」と述べ、単年度での黒字化目標を転換する意向を示した。

 PBは、社会保障や公共事業などの行政サービスを提供するための政策経費を、借金に頼らず税収などでどれだけ賄えているかを示す指標。今年6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」には、「2025年度から26年度を通じて、可能な限り早期の黒字化を目指す」と明記された。

 首相は財政運営方針について「責任ある積極財政という考え方の下で戦略的に財政出動を行い、強い経済を構築し、経済成長率を高める」と説明。「中期的に債務残高対GDP(国内総生産)比の引き下げを安定的に実現する中で、必要に応じてPBの目標年度についても再確認を行う」と述べた上で、「単年度のPBという考え方については取り下げると考えていただいて結構だ」と語った。

 PBは財政の持続可能性を高める主要な指標として位置づけられる一方、PB目標が政策の「縛り」となり、財政政策の機動性を損なうという考えもある。成長戦略を重視する高市氏も単年度のPB目標の設定はマイナスの影響が大きいと考えているとみられる。高市氏は21年9月の自民党総裁選ではPB黒字化目標の時限的な凍結を訴えていた。

 黒字化目標の年限が初めて掲げられたのは02年。バブル崩壊後の1992年度から赤字が続き、財政再建を目的に「10年代初頭」の黒字化目標が定められた。しかし大規模な財政支出が続き、黒字化は一度も達成されていない。内閣府が8月に公表した試算では、企業の好業績による税収増などで、26年度に3・6兆円程度の黒字となる見通しが示されていた。

 首相はまた、中国による台湾の海上封鎖が発生した場合の事態認定について問われ、集団的自衛権の行使が可能となる「存立危機事態」に認定される具体例に言及した。台湾有事と考えられるケースとして、海上交通路(シーレーン)の封鎖や偽情報の拡散などを例示。その上で「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだ」と答えた。

 政府はこれまで、台湾有事が存立危機事態に該当するかについて、「いかなる事態が該当するかは、個別具体的な状況に即し情報を総合して判断することとなるため、一概に述べることは困難」などと述べており、踏み込んだ格好だ。

 自民党と日本維新の会による連立政権合意に盛り込まれた衆院議員定数削減については「公党間で作った合意書なので、まず議員立法案は(臨時国会に)提出しなければいけない。今、少数与党だから必ず成立するかどうかは分からない」との認識を示した。また維新との連立協議の過程では、選挙制度全体の中で定数削減を考えるとの認識で一致し、国勢調査の結果が26年に出た段階で「どこをどのように削減するかも詰めましょう、という話もした」と明らかにした。【野間口陽、加藤結花、神山恵】

毎日新聞

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