「拘禁刑」概要が判明 受刑者を24課程で更生支援 再犯防止へ軸足

2025/01/21 17:25 

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 6月から導入される懲役と禁錮を一本化した「拘禁刑」で、法務省が検討している矯正処遇の全体像が判明した。犯罪傾向に基づいて受刑者をグループ分けしてきた手法を廃止し、24種類の矯正処遇課程を新設。受刑者の資質や事情に合わせて分類し、オーダーメード型の処遇で改善更生を促す。懲役と禁錮が見直されるのは刑法が1907年に制定されてから初めてで、刑事政策の転換点となる。

 現行の刑罰の中核である懲役では、受刑者に物品製作や職業訓練といった「刑務作業」が義務付けられ、主な処遇となっている。禁錮は刑務作業を義務付けられていないものの、禁錮受刑者の多くは自ら希望して刑務作業に従事している。

 懲役は、罪の報いを科す「懲らしめ」の意味合いが強かった。しかし、2022年の改正刑法成立で拘禁刑導入が決まり、拘禁刑下では「受刑者の改善更生を図るために必要な作業をさせ、指導を行う」とされ、刑罰は懲らしめから再犯防止に軸足を移すことになった。

 現在、受刑者は主に犯罪傾向の進み具合に応じて収容先が分類されている。このため、高齢で窃盗を繰り返す受刑者と、暴力団組員の受刑者が「犯罪傾向が進んでいる」として同じグループに分けられるようなこともあるという。

 現行制度では個々の特性に応じた立ち直り支援が難しいことから、法務省は受刑者をどのように分ければ効果的な処遇ができるのかを検証。24年1月から試行を始め、24種類の課程を設けることにした。

 関係者によると、拘禁刑下では、年齢に着目した「少年処遇」「若年処遇」「高齢福祉」▽刑期の長さに応じた「短期処遇」「長期処遇」▽外国人向けの「外国人処遇」――といったグループを設ける。

 また、精神的な疾病や知的・発達障害が対象の「福祉的支援」や、薬物の使用歴がある「依存症回復処遇」も創設するという。課程の名称は今後、正式に決める。受刑者は24種類のうち、いずれかを指定される。それぞれの課程で、受刑者の特性に応じた専用のプログラムを用意する。

 拘禁刑は6月1日以降に起きた事件・事故で起訴されて有罪になれば対象となるが、懲役、禁錮の受刑者も新課程に移行する。懲役受刑者は刑務作業にも従事しつつ、新課程で処遇を受けるという。

 ◇刑事施設の体制も見直し 作業と指導の部署統合

 法務省は拘禁刑の導入に合わせて、25年度から受刑者を収容する刑事施設(刑務所、拘置所、少年刑務所)の組織体制も大きく見直す方針だ。

 懲役受刑者は刑事施設で刑務作業に従事しつつ、犯した罪の問題性に応じて改善を促したり、社会復帰後に必要な学力を身に付けさせたりする「指導」を受けている。

 ただ、懲役の主な処遇は刑務作業で、法的にも義務づけられていたため、刑務所は刑務作業を前提とした体制になっていた。

 刑務作業を担当する部署と、指導を担当する部署の縦割りの弊害を指摘する声もあった。

 拘禁刑の導入で刑務作業が必須でなくなることを踏まえ、法務省は各刑事施設の刑務作業を担当する部署と、指導を担当する部署を統合し、「矯正処遇部」を設ける。

 拘禁刑では、受刑者は資質や事情に応じて、24種類の矯正処遇課程に振り分けられる。また、社会復帰に向けた立ち直りが求められるため、出所時の支援も重要になる。入り口と、出口の機能を充実させるため、主要な刑事施設には「調査・支援部」を設置するという。【三上健太郎】

毎日新聞

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