石破首相「日米同盟を新たな高みに引き上げる」 硫黄島で合同慰霊式
石破茂首相は29日、太平洋戦争末期に日米両軍による激戦地となった硫黄島(東京都小笠原村)を訪れ、現職の首相として初めて日米合同慰霊式に出席した。首相はあいさつで「我々が享受している平和や繁栄は、戦没者の尊い犠牲と戦後80年にわたる人々のたゆみない努力の上に築かれたことを決して忘れてはならない」と強調。「平和の尊さを心に刻み、世界に平和と繁栄をもたらす日米同盟を新たな高みに引き上げていく」と表明した。中谷元・防衛相やヘグセス米国防長官らも参列した。
首相は合同慰霊式で「戦争の惨禍を決して繰り返すことがないよう、我々は歴史に真摯(しんし)に向き合い、悲痛な戦争体験を世代を超えて語り継ぐ努力を続ける」とも語った。
米国防長官として初めて合同慰霊式に出席したヘグセス氏は「日米同盟は、昨日の敵は今日の友となったことを示している。同盟はインド太平洋地域の自由、繁栄、安全、平和の礎であり続けている」と述べた。
首相はこの後、日本側遺族らが主催する慰霊式に出席したほか、遺骨収集現場などを視察した。
合同慰霊式は戦後50年に当たる1995年、日米の友好親善を目的に始まった。日本側の遺族でつくる硫黄島協会と米国硫黄島協会が共催。硫黄島の戦いを指揮して戦死した栗林忠道陸軍中将(戦死後大将)の孫の新藤義孝・自民党政調会長代行らも参列した。
硫黄島では45年2~3月、日米の戦闘が繰り広げられた。日本兵約2万2000人、米兵約7000人が犠牲になり、日本人戦没者の遺骨1万体以上が収容されずに今も残っているとされる。
首相は一連の硫黄島訪問日程を終えた後、硫黄島航空基地前で記者団に「なお1万1000人の遺骨が故郷を思いながらこの地に眠っている。政府を挙げて遺骨を収集し、一日も早くご帰還いただく」と述べた。
首相は先の大戦を検証するため、会議体を設置するなどして有識者から意見聴取する調整に入っている。これに関しては「今まで70年、60年の節目ごとに平和への思いを込めて、いろいろな形でメッセージを発してきた。どうすれば平和を築くことができるか、過去の検証とともに未来への思いを込めて考えていきたい」とした。具体的なスケジュールなどについては「まだ何ら定まっているものではない」と述べるにとどめた。
現職の首相の硫黄島訪問は、2013年4月の安倍晋三首相以来。【内田帆ノ佳、中村紬葵】
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