植物の接ぎ木に「オートファジー」の関与を発見 京大などのグループ
植物の接ぎ木の際に生じる傷の修復に、細胞内の不要物を分解する「オートファジー」が関与していることが分かったと、京都大や名古屋大などの研究者らのグループが発表した。植物の再生能力は知られているがメカニズムは明らかではなく、観察による想定外の新たな発見という。接ぎ木技術の効率化や利用範囲の拡大につながり、農業分野への活用がより高まることが期待される。
京都大大学院理学研究科の野田口理孝教授(名古屋大生物機能開発利用研究センター特任教授兼務)、黒谷賢一准教授(研究当時は同センター特任准教授)らのグループで、研究成果は4月12日に英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズにオンライン掲載された。
オートファジーは自食作用とも呼ばれ、細胞内で古くなり不要になったたんぱく質や小器官を分解・再利用して新陳代謝を促進する。細胞内の「リサイクルシステム」とも言え、仕組みを初めて解明した大隅良典・東京工業大(現東京科学大)栄誉教授が2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞したことでも知られる。
接ぎ木は二つ以上の植物を人為的につなぎ合わせ、それぞれが持つ果実などの食味や収量、病気・暑さ・寒さへの耐性などを併せ持たせる農業技術。グループによると、2000年以上の歴史がある一方、成立のメカニズムは不明な点が多く、科学的解明が求められてきた。
今回の研究では、異なる科の植物とも接ぎ木が可能なベンサミアナタバコ(ナス科)に着目。これとは遠縁で植物研究でよく使われるシロイヌナズナ(アブラナ科)に接ぎ木した。境界部分を透過型電子顕微鏡で観察したところ、オートファジーで不要なたんぱく質などを包み込む「オートファゴソーム」が細胞内の消化器官(液胞)に取り込まれた構造物が思いがけず見つかった。しかも、栄養が枯渇する接ぎ木の上部分で特に多かった。同じ植物種間での接ぎ木でも同様の観察結果だった。
さらに、オートファジーに関係する遺伝子の機能を欠損させた変異体では、接ぎ木の成功率や事後の生育速度が低下することも判明。変異体では接ぎ木の傷口に、組織修復のため形成される新規の細胞群「カルス」の量も減少し、特に栄養欠乏条件下で顕著だった。
こうした結果から、栄養欠乏条件下でカルス形成を促すには、オートファジーの作用が重要と示唆された。接ぎ木した組織の修復のために傷口で細胞を増殖させる植物には、オートファジーの活性化が特に重要と判明。接ぎ木により一時的に栄養欠乏状態となった傷口でオートファジーが活性化し、カルスの形成が促進されることで、二つの組織の結合が果たされることが分かったという。
黒谷准教授は「接ぎ木だけでなく、植物が切断などの外傷を受けた際に回復する生理現象の探求にもつながる」と話している。【太田裕之】
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