盲目の旅芸人「瞽女」に魅せられた女性 母の勧めで始めた三味線
盲目の女性旅芸人・瞽女(ごぜ)。三味線を手に瞽女唄(うた)を披露し、暮らしを立てていた。その芸と精神に魅せられた長野県東御市の広沢里枝子さん(66)は20代の時に視力を失ったが、唄や周囲の人など「さずきもん(授かり物)」に感謝し、「瞽女唄うたい」の道を歩む。【去石信一】
――広沢さんの小学校入学前の視力は0・3。特に暗い所で見えず、視野も狭かった。小2の時、「網膜色素変性症」で、将来の失明を宣告された。
◆(健常児と別に学ぶ)「分離」の力が働く時代で、盲学校への転校を先生に言われました。親には「だって見えないんだもん」って言わないから、このまま頑張りたいと言いました。病気を知られると「ここ(学校)にいられなくなる」と思ったので他の人には言わず、その先生が転勤した後は誰も知らなかったと思います。
――小3の時、父の転勤で静岡県沼津市から埼玉県皆野町へ。
◆大事にしてもらい、一番楽しい子供時代でした。夕方にドッジボールをする時は、誰かが手をつないで一緒に逃げたり、ボールを持たせてくれたり。暗い所で見えないことはどうしようもないので伝えていました。
――長唄三味線は母の勧めで小4から始めた。母が弾いていた琴を望んだが「私が教えると甘くなる。一つの楽器を徹底して身に着け、生きていかなければいけない」と言われ、三味線を選んだ。
◆自立の道を付けたいと、母は必死だったと思います。母の付き添いで、平日は秩父市の先生の所に通い、晩ご飯の後に家で復習。私も一生懸命でしたし、舞台を喜んでもらえるのをうれしく思いました。
――小6になって神奈川県小田原市で叔母と暮らし始め、長唄三味線はやめた。「失明までの日々を自由に生きたい」と思った。
◆自分で人生を決めたくて、母が付けた道を一度手放すことが必要でした。盲学校に行って生き生きした人を知れば違ったかもしれませんが、見えなくなった後を想像できず、人生は20歳くらいまでと思っていました。
――公立中学に上がった後、箱根町にあるカトリック系の私立の学園に自分で移り、寄宿舎生活に。視力はますます落ちていた。
◆一番の問題は視野で、ちくわの穴からのぞく感じ。病気を明かさない以上、不自由は自分でカバーするしかありません。本は1回読むのが精いっぱいで、内容を覚えるため、声に出して録音しました。料理などで失敗することもあり、病気を隠すのは限界に近付いていました。
そんな時、年下の子がお母さんを亡くして苦しむ姿に接しました。自分の苦しさを初めて伝えたくなり、失明するかもしれないと話しました。私の高校受験の時、彼女が毎日昼休みにひざまずいて合格を祈ってくれていたことを入学後に知り、かたくなだった気持ちに人への信頼感、安心感が芽生えました。
――高校は同じ学園に。
◆受験の日、数学のグラフ用紙の線が見えず、気が遠くなって白紙で出しました。それでも合格したのは、先生方が普段の私を知っていたから。「心配したのよ」と、目の状態に気付いてくれた先生がいました。病気を打ち明けると、資料を録音したり、字を濃く書き直したり、声を出して板書してくれたり。周囲には目が弱いとだけ伝えると、他の先生も同じように振る舞い、級友も助けてくれました。「表明」したことで状況が変わりました。
病気に気づいた先生に「一度、盲学校に行ってみましょうよ」と誘われ、行ってみることに。でも、そこでは「卒業したら鍼灸(しんきゅう)マッサージ(師)。でなければ音楽家」と言われ、「他の道は?」と聞くと「無い。いい年になればあきらめますよ」と……。先生の手をぎゅっと握ったら、先生もぎゅっと握り返して。泣きながらお昼を食べていた時、先生は「それしか道がないとしたら、それ以外は何をやっても新しいし意味がある。思うことをやりなさい。応援するわよ」と言ってくれました。
皆への感謝を込めて「私の宝物」という作文で、病気を明かしました。コンクールで賞をもらい、私が欠席した日に皆の前で読まれ、翌日の卒業式の日に皆から「よく頑張ったね」と言ってもらいました。
◇広沢里枝子(ひろさわ・りえこ)さん。
1958年、静岡県沼津市生まれ。長野県に住んだのは上田市の長野大入学から。一時離れて、現在は東御市在住。盲導犬をパートナーに、「越後瞽女唄探求の旅」として演奏活動をしている。毎月最終土曜日の午後4時から30分間、信越放送(SBC)ラジオで、さまざまな分野で活躍する人を呼ぶ「里枝子の窓」のパーソナリティーを務め、同名のホームページでは普段の活動などを紹介している。
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