生活保護費減額は違法 最高裁が初の統一判断 受給者の勝訴確定

2025/06/27 15:02 

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 国が2013~15年に生活保護費を段階的に引き下げたことが、健康で文化的な生活を保障した生活保護法に違反するかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(宇賀克也裁判長)は27日、減額を「違法」とする初の統一判断を示した。全国29都道府県で1000人超が起こした同種訴訟では、違法か適法かで司法判断が割れていた。減額の取り消しを求めた受給者側の勝訴が確定した。

 13~15年の生活保護費の削減効果は約670億円で、原告ではない全国の受給者も違法な減額の影響を受けたことになる。受給者側は国に被害回復と検証を求めていく方針で、厚生労働省は対応を迫られる。

 地裁、高裁段階では、減額を違法とした判決が27件、適法は16件だった。継続中の訴訟は、最高裁の判断に沿って違法判決が続く見通しとなった。

 上告審の対象となった2件の訴訟では、大阪高裁判決(23年4月)が減額を適法と判断し、受給者側の請求を棄却した。一方、名古屋高裁判決(23年11月)は違法と認定して減額決定を取り消し、国に受給者1人あたり1万円の賠償を命じていた。

 物価や給与が変動する中、生活保護費を据え置くと、一般の低所得世帯と生活保護受給世帯の間に不均衡が生じる。このため、厚労省は5年に1度、生活保護費を見直している。訴訟では、見直しに用いられた「ゆがみ調整」と「デフレ調整」の違法性が争われた。

 ゆがみ調整は、生活保護費の算定の基礎となる「生活扶助基準」に一般低所得世帯の消費実態を反映させる措置。13~15年で生活保護費約90億円の削減効果があるとされた。デフレ調整は、ゆがみ調整をした後の基準に物価の下落率を反映させる措置。減額効果は同じ期間で約580億円と見込まれた。【巽賢司、肥沼直寛】

毎日新聞

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