直接実行しなくても「詐欺」初判断 最高裁「出し子」に逆転有罪判決

2025/07/11 19:57 

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 特殊詐欺事件で詐欺行為を直接実行していない現金引き出し役の「出し子」が、電子計算機使用詐欺罪で指示役らとの共謀が成立するかが争われた刑事裁判の上告審判決で、最高裁第3小法廷(平木正洋裁判長)は11日、「共謀は成立する」との初判断を示した。その上で、一部無罪とした2審判決を破棄し、被告の男性(43)を逆転有罪とした。懲役4年の1審判決が確定する。

 裁判官5人全員一致の意見。電子計算機使用詐欺罪は、現金自動受払機(ATM)などに虚偽の情報や不正な指令を与えて不法な利益を得た場合に適用され、電話をかけて被害者をだます「かけ子」は立件されてきた。しかし、直接詐欺行為に加担していない出し子も対象になると明示した最高裁の判例はなかった。

 被告は何者かと共謀し、2021年10~12月、保険料の還付金を受け取れるとうそを言って8人に計約770万円を振り込ませた電子計算機使用詐欺罪と、ATMから現金を引き出した窃盗罪に問われた。

 小法廷は、被告は指示役から暗証番号が書かれた他人名義のキャッシュカードを受け取り、詐欺に関わる可能性を認識していたと指摘。かけ子は、被告がATM付近で待機することを前提に現金を振り込ませており、「暗黙のうちに意思を通じ合っていた」と判断した。

 1審・青森地裁八戸支部(23年3月)は電子計算機使用詐欺と窃盗の両罪の成立を認めたが、2審・仙台高裁(24年1月)は電子計算機使用詐欺罪は無罪とし、懲役3年6月に減刑していた。【巽賢司】

毎日新聞

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