お尻に鋭い痛み…振り向くとクマが 被害減らぬ地域で行政に募る不満
行政に通報しても捕獲につながるわけではない。聞き取りに時間がかかるだけ――。クマの目撃が相次ぐ栃木県の那須地域では、住民の間で行政対応に対する不信感がくすぶる中、実際に人が襲われる事案が相次ぎ、地域は緊張に包まれている。県警によると、今年4月から6月までの間に寄せられたクマの目撃情報は60件に上り、過去最多だった昨年度の件数に迫っている。人とクマの距離が縮まる中、現場を歩いた。【渡辺佳奈子】
◇住宅地で男性を襲撃
6月30日、那須塩原市埼玉で近くに住む農業の男性(73)がクマに襲われた。現場はJR黒磯駅から3キロほどの住宅地で田んぼや畑のほか、商店や小学校などもある。
午前6時半ごろ、水田の水量を確認しに行った男性は、黒い犬のような動物が走り回っているのを目撃した。よく見ると犬ではなく、体長1・5メートルほどのクマだった。近所の自治会長宅で警察に通報したが、水田に戻ろうとしたところで再びクマに遭遇した。
クマは最初に自治会長に向かったが、自治会長が軽トラックの荷台に逃げ込むと標的を変え、男性に向かってきた。目が合った瞬間、男性に覆いかぶさり、ツメなどで頭部を攻撃。男性は後頭部に35針を縫う重傷を負った。男性が辛くも屋内に逃げ込むと、クマは網戸に体当たりして去って行ったという。
このクマはまだ捕獲されていない。男性は「あっという間の出来事だった。命があったのは奇跡だと思う」と振り返り「子どもが被害に遭うかもしれない。早く捕まえないと安心できない」と話す。
襲撃現場近くの同市立埼玉小ではクマの出没を受け、保護者による児童の送迎を実施。その後、クマの目撃情報がなかったため、7月11日に終了した。
那須地域では、6月末から7月初めにかけ、この男性のほか立て続けに2人がクマに襲われ、重軽傷を負う事態となった。
◇別の山間部でも被害
7月6日には、同市上塩原の塩原温泉郷近くの山あいで無職の君島宏さん(85)が被害に遭った。午前5時半ごろ、自宅の裏山で、日課のレンギョウの剪定(せんてい)作業中に背後からクマに襲われた。君島さんは「お尻に鋭い痛みを感じて振り向くと1メートルほどのクマがいた」と振り返る。とっさに「コラ――」と大声で叫ぶとクマは逃げていった。
ヘルメットと厚手のズボンを着用していたことが幸いし軽症だったが、感染症予防で病院で消毒と抗生物質の投与を受けている。
クマ被害の相次ぐ状況を受け同市では、市町村の判断による「有害鳥獣捕獲許可」の発行を検討している。ただ、同市ネイチャーポジティブ課の担当者は「わな設置により、クマをおびき寄せることになる」と慎重な姿勢を見せている。
◇住民は行政の対応に不満
一方で、地元住民の間では行政対応に対する不満も募っている。那須地域には、夏休みに多くの親子連れやキャンプ客が訪れるため、被害者が増えることが危惧される。
君島さんは「『クマを見た』と通報しても、行政はパトロールをするだけで意味がない。通報するのは観光客ばかりで、地域住民は聞き取りに時間をとられるだけで通報するだけ無駄だと諦めている」と眉をひそめる。
君島さんによればかつてはクマは森の中で、サクランボやタケノコを食べる程度だったが、近年はトウモロコシ畑を荒らし、生ごみをあさる姿が目撃されている。わなにかかったシカがクマに襲われた痕跡を見たこともある。君島さんは「今年はついに人を襲うようになった。クマも人を恐れなくなっている。行政は現実を直視し、猟友会が即時対応できる法整備を急ぐべきだ」と強く訴える。
県自然環境課は「クマは行動が読めない。一番重要なのは出合わないこと。もし出合ってしまったら走らずに、ゆっくりと離れて身を守ってほしい」と注意を呼びかけている。
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