2023年の海洋熱波、観測史上最大との分析 環境の回復不能近づく?

2025/09/03 13:25 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 海面水温が異常に高くなる「海洋熱波」が、2023年はその強度、広がり、継続期間において観測史上最大だったとする分析結果を中国などの研究チームがまとめた。23年は日本を含む世界各地で記録的な暑さとなり、山火事や洪水などが頻発。海洋熱波が一因と指摘される。チームは「記録的な海洋熱波は、自然環境が回復不能に陥るティッピングポイント(臨界点)に近づいている可能性を示している」と警鐘を鳴らしている。

 海洋熱波は海面水温が平年より高い状態が数日~数カ月続く現象。魚類やサンゴなどの海洋生態系に深刻な影響を与え、気温上昇にもつながる。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告書によると、地球温暖化に伴い海洋熱波の頻度や強度が増すことが分かっているが、発生範囲や継続期間などは不明な点が多かった。

 チームは気象観測データから、23年の海洋熱波が世界の海洋面積の96%を覆い、継続期間は1982年以降の平均値の4倍近い120日間に及んだことを割り出した。

 その上で、広さと時間、強度(水温の上昇幅)をかけ算した海洋熱波の活発さを示す指数を作り、平年値と比べたところ、23年の値は3倍を超えていた。地域別にみると、北大西洋で276年に1回、南西太平洋で141年に1回しか起こらない確率の異常な活発さだったという。

 また、人工衛星データも用いて大気の動きや海流などを分析した結果、北大西洋と北太平洋では雲の減少と太陽光の増加が高温化の主因と分かった。一方、南西太平洋は暖かい海水の流入が主因だった。地域によって海洋熱波の発生要因が異なることが判明し、複雑なメカニズムの解明を進めることが効果的な気候変動対策に役立つとしている。

 チームを率いた南方科技大の曽振中教授は「人間の健康状態の指標が体温であるように、海面水温は地球環境を知る上で大きな意味を持つ。23年の海洋熱波は別次元の規模だったが、24、25年も記録的な数値が予想される。海洋と大気の相互作用に重大な変化が起きている可能性がある」と指摘した。研究成果は米科学誌サイエンスに掲載された。【田中韻】

毎日新聞

社会

社会一覧>