<eye>富士山の穴場 ふもとから登る吉田口登山道の魅力
山梨県側の富士山北麓(ほくろく)、標高1450メートルの「馬返し」で、大勢のランナーが江戸時代に建てられた鳥居をくぐってゆく。「吉田口登山道」を山頂まで一気に駆け上がる富士登山競走の様子だ。吉田口登山道は、ふもとの北口本宮冨士浅間神社(富士吉田市)を起点に、山頂まで長さ約18キロ、標高差2900メートルの長大なルート。かつては富士山信仰による富士講が隆盛し、多くの登拝者がこの道を通り、山頂を目指した。
しかし1964年、5合目まで富士スバルラインが開通すると登山者は激減した。5合目より下の登山道は廃れ、十数軒あった茶屋や山小屋はほとんど廃業した。ところが近年、ふもとの登山道を見直す動きが出てきている。
「頑張ってー!」。通過するランナーに声援を送るのは、馬返しに建つ茶屋「大文司屋」の店主、羽田徳永(はだとくなが)さん(61)だ。1合目の手前にある馬返しから、道は険しくなる。かつては身支度をして登山に備える場所だった。大文司屋は江戸時代から羽田さんの父まで5代にわたり登山者をもてなしてきたが、64年に店を閉めた。羽田さんは「廃屋となった小屋を自分の子供にまで残せない。地域貢献になれば」という思いもあり、仕事を早期退職。5年前に茶屋を再開させた。
富士山は5合目辺りを境に、上部は岩が多く草木の少ない荒涼とした風景だが、下部には深い森が広がり小鳥のさえずりが響く。「外国人がここに来て、ワンダフル、ビューティフルと言う。ただ登るだけではなく、植物や鳥を見たりトレイルランニングしたり。そのための基地として広まれば」と羽田さんは語る。
「5合目までの登山道は、歴史の面影が濃い」と話すのは、約450年前から続く御師(おし)の家「菊谷坊」18代目の秋山真一さん(37)だ。
御師の家は、富士山に登拝する富士講の人たちを、宿坊や祈禱(きとう)の場として迎え、富士山信仰を広める役割を果たしてきた。江戸末期に86軒あった富士吉田の御師は、富士講の衰退で減少した。市によると建物が残るのは十数軒で、菊谷坊など今も富士講を迎えるのは5軒のみ。菊谷坊は6年前から一般の宿泊客も迎え営業している。
「富士講や登山道、御師、それらをひっくるめて富士山の歴史。歴史を知ってもらう活動に取り組みたい」と秋山さんは登山道再興への期待を寄せる。
富士山は世界文化遺産に登録されて今年で12年となった。一方、廃業した小屋は放置され、信仰登山の歴史を伝える登山道周辺の維持管理も不十分だった。富士吉田市は今春、アウトドアブランド「サロモン」を展開する企業と連携し、ふもとの「中の茶屋」をリニューアル。吉田口登山道の保存と活用のための活動計画を策定し、活性化に向けて動き出している。
富士山は9月10日で閉山した。市によると、今年7月1日からの開山中、主に5合目からの吉田口登山者数は約14・3万人。馬返しを通過した人は、昨年より1・5倍増の約2万人だった。5合目より下は閉山が無く、大文司屋も11月3日まで営業する。オフシーズンに富士山の新たな一面が見つかるかもしれない。
富士山では山梨・静岡両県で今年から開山中に1人4000円の入山料徴収が始まった。ふもとからの登山では、5合目までの往復なら入山料は不要だ。しかし6合目以上への登山や、車道がつながる「富士スバルライン5合目」に向かうと入山料が必要になる(今年の入山料徴収は9月10日で終了)。
吉田口登山道を登って最初にたどり着く5合目の「佐藤小屋」は通年で営業している。
この小屋はスバルライン5合目からゲートを超えて約30分歩いた先に建つ。ゲートの先は5合目周辺の無料散策ツアーを除き、一律で入山料を払う必要がある。また小屋の宿泊予約が無いと午後2時以降通過できないという規制も。
経営者の佐藤保さん(66)は今年の状況について「散策して食事していくような観光客が来なくなった。子供や幼稚園児も金額は一律。その辺はもうちょっと考えて、半額とかでも良いのでは」と語る。
登山を目的としない人にとっては行動範囲が制限された形で、佐藤小屋のすぐ上に建つ「星観荘」でも今年は観光客が減少したという。
今は外国人の宿泊客が来ないと経営が成り立たないという佐藤小屋。「昔は大勢の人が下から歩いてきた。もう一度、利用する人が増えてくれれば」
新たなルールや訪れる人の変化とともに、登山道を取り巻く状況も移り変わってきている。【手塚耕一郎】
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