核のごみ交付金の65%を経常・義務経費に支出 専門家「不健全」

2025/10/22 06:30 

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 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定に向けた文献調査が行われた北海道寿都(すっつ)町が、町に支払われた交付金18億5000万円のうち、65%に当たる12億1347万円を人件費などの経常・義務的経費に充てていたことが判明した。

 専門家は「永続が必要なサービスに一時金を充てるのは健全ではない」と指摘する。

 文献調査は2020年11月、全国で初めて、寿都町と北海道神恵内(かもえない)村で始まった。

 調査地の自治体と近隣町村には、人件費や施設運営費などを含めて使途が幅広く認められる電源立地地域対策交付金が2カ年で計20億円支払われる。

 寿都町の場合は受け取りを希望した隣接の岩内町に1億5000万円、寿都町に残りの18億5000万円が21、22年度に交付された。

 町の決算書によると、交付金を積み立てる基金造成事業を除き、21~25年度に交付金を充当した事業は112。

 毎日新聞が全ての事業を確認したところ、看護師住宅整備事業(1億9998万円)や団地・道路改修などの一時的な支出を除く90事業が義務的経費や20年度以前から続く経常経費だった。

 町によると、交付金を充当した事業は全て自主財源から支出予定だったものだ。担当者は「自主財源は限られ、他の交付金を活用できない事業に今回の交付金を充てている」と説明。ただ、浮いた自主財源を活用して新規事業を追加したことはないという。

 一方、周辺町村への配分を除く15億5000万円の交付を受けた神恵内村は、大部分を臨時的経費として施設整備などの事業に充てた。

 漁港の荷さばき施設新設に8億5670万円、温泉施設新設に4億1398万円、漁協のホタテ養殖設備整備に1億3300万円を活用。総額14億368万円で、交付金の90%に上った。

 寿都町の対応について、総務省財政課の担当者は「交付金の要綱などルールにのっとっていれば問題ない」とする。

 一方で、北海学園大の上園昌武教授(エネルギー経済論)は「地域経済の自立を目指さないといつまでも交付金依存になる。義務的経費への充当では自立と逆行する」と指摘。住民が望む社会のあり方の合意形成を図った上で必要な予算を考えることが重要とし、「一時的な交付金は過疎地域を活性化させる使い道を考えるのが望ましい」と述べた。【片野裕之、森原彩子】

毎日新聞

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