AI活用で被爆者と疑似対話 広島で装置完成 「惨状忘れぬ」

2025/10/22 06:15 

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 広島市は20日、人工知能(AI)を活用し、モニター画面に映し出された被爆者と疑似的に対話できる「被爆証言応答装置」の完成披露会を開いた。製作協力した被爆者4人や高校生たち約20人が招かれ、装置を試した。

 装置は被爆者の高齢化が進む中、最新技術を駆使して記憶を語り継ぐために市が製作した。広島原爆の被爆者5人のうち、対話したい人を端末で選ぶと、スクリーンにほぼ等身大の姿や被爆状況の簡単な説明が映し出される。スクリーンに向けて質問すると、事前収録したインタビュー映像からAIが最も適切な動画を選んで再生する仕組み。

 市は2024年11月から今年1月にかけて、被爆者5人に協力してもらい1人につき200問超の質問に答える動画を作成した。

 披露会では、高校生たちが「もし戦争がなかったら、何をしていたと思いますか」「平和な世界に向けて、私たちができることは何ですか」とスクリーンに向かって問いかけた。

 画面に映し出された被爆者からは「もっともっと勉強したかった」「弱い者いじめや暴力がある限り、本当の平和とは言えないのよ。国家間の紛争の解決は話し合いでやってほしいと、しつこく訴えていくしかない」といった回答が返ってきた。

 疑似対話を見守った被爆者の内藤慎吾さん(86)は「対面の証言だと(聴衆と)交流する時間が限られているので、多くの人に装置を使ってどんどん質問してほしい」と語った。切明千枝子さん(95)は「広島の惨状が忘れられてしまわないように、映像、声、形として残されるのがありがたい」と話した。

 装置を試した崇徳高2年、宮本桜さんは「目の前に被爆者の方がいる感じで、スムーズな回答がもらえた」と話していた。

 市は常設型2台と、持ち運びができる3台を製作し、来年度中に原爆資料館に設置する方針。【武市智菜実】

毎日新聞

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