防衛省、自衛隊をクマ捕獲支援に派遣で調整 秋田が要望、異例の対応

2025/10/27 18:46 

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 秋田県の鈴木健太知事は27日、クマによる人身被害が県内で相次いでいることから、28日に防衛省を訪ね、自衛隊派遣を要望する考えを明らかにした。銃などを使った有害駆除ではなく、クマ捕獲の後方支援を想定している。防衛省は27日、要望を前提として部隊を派遣する方向で調整に入った。

 クマの人身被害を理由に自衛隊派遣が実現すれば極めて異例。鈴木知事は報道陣の取材に「有害駆除の頭数もかなりの数に上っていて、各市町村で編成している駆除実施隊のマンパワーも既に限界を超えている。(こうした状況が)1カ月以上続いており、国の力を借りないとやっていけない」と述べた。

 2025年度の秋田県内のクマによる人身被害は27日午前11時現在、47件に上り、2人が死亡、52人が重軽傷を負った。過去最悪だった23年度と同じようなペースで推移している。市街地でのクマの出没も目立っており、今年度はすでに1000頭以上を有害駆除している。

 鈴木知事は、猟友会で編成される駆除実施隊は高齢化が進んでいる上に人数が限られ、箱わなにクマがかかっていても回収できず解体処理も追いつかない状況だと説明。自衛隊による後方支援として、重い箱わなの運搬や設置▽箱わなの見回り▽駆除した個体の解体処理――などを想定しているとした。

 自衛隊法では、クマの有害駆除に自衛隊の武器を使うことは規定されていない。防衛省は28日に正式な要望を受けて支援内容を詰めるが、クマ捕獲の後方支援が中心になるとみられる。

 陸自関係者によると、日ごろ有害駆除の訓練はしておらず、演習場内にクマが出没した場合は距離を取ることを基本にしているという。同省は「市街地で銃器を用いた駆除の実施は困難。できることを整理して協力したい」としている。

 防衛省によると、10~14年度に北海道でのエゾシカ駆除にあたりヘリを使って上空から生息状況を調べ、捕獲されたシカを車両で輸送した事例がある。14~16年度には高知県でもヘリでニホンジカの生息状況を調査した。【高橋宗男、松浦吉剛】

毎日新聞

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