米海兵隊、30年ぶりに公道封鎖し訓練 静岡で 1996年度の沖縄以来

2025/10/27 19:29 

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 陸上自衛隊の東富士演習場(静岡県)で27日、米軍が長射程の高機動ロケット砲システム(HIMARS=ハイマース)の射撃訓練を実施した。演習場内を通る国道を一時通行止めにし、公道を封鎖した米軍の射撃訓練は沖縄県での実施以来、約30年ぶりとなる。

 「射撃訓練実施中 この先通行止め」。同日午前10時、演習場につながる国道469号の路上に、静岡県警の警察官が看板を設置した。その数分後、南東側から北西方向に飛行機雲のような白煙を発したロケット弾が飛行。「ヒュー」という風切り音に続いて「ドーン」とごう音が響いた。

 通行止め地点には市民団体の呼びかけで約50人が集まり、「東富士をミサイル基地化するな」「国道越えの訓練を許さないぞ」などと抗議した。

 防衛省などによると、射撃訓練を実施したのは沖縄県駐留の米海兵隊。2門のハイマースと爆発の危険性のない「演習弾」を用い、計12発を発射。ミサイルが演習場内の国道469号上空を通過するため、午前10時から約30分間、午後1時からは約10分間、御殿場市と裾野市を結ぶ約3キロの区間が通行止めとなった。

 米海兵隊のハイマース射撃訓練はこれまで、広大で公道封鎖の必要がない矢臼別(やうすべつ)演習場(北海道)で年に1回程度、実施されてきた。だが沖縄からの移動に時間がかかるのが難点とされ、訓練機会を増やそうと考える米軍が白羽の矢を立てたのが、本州で最も広い東富士演習場だった。

 実施に向けて防衛省は地元と協議を重ね、御殿場と裾野、小山の2市1町と地権者団体らは「苦渋の決断」として、「今回限り」の条件で受け入れた。ただ協議では中谷元・前防衛相が現地入りした際、地元の負担軽減策として「国道のトンネル化」に言及。公道を封鎖する訓練の継続を見据えた発言との見方もある。

 この日の射撃訓練を受けて防衛省は、騒音苦情や渋滞発生の情報は「本省では把握していない」と説明。今後の実施に関しては「現時点で米軍から打診を受けていない。仮に実施する場合には地元との調整を丁寧に進めていく」とした。

 米軍は地元首長や地権者代表らに訓練を公開した。東富士演習場地域農民再建連盟の勝又亮一委員長は、「米軍の訓練は突き詰めれば日本国民の生命財産を守る訓練とは理解するが、沖縄県での県道越えの砲撃訓練が廃止されたことを考えると、時代の流れに逆行している」と話した。

 公道を封鎖する米軍の射撃訓練は、1996年度までキャンプ・ハンセン演習場(沖縄県)で繰り返されていた。山林火災が度々発生するなど住民生活に悪影響を及ぼすとして、沖縄県などが長年にわたり中止を申し入れ、95年の米兵による少女暴行事件を受けた日米協議で廃止された。

 一方、東富士演習場では今月7日、陸自も長射程の多連装ロケットシステム(MLRS)の射撃訓練を実施し、今回と同様に国道が一時通行止めとなった。【松浦吉剛、石川宏】

毎日新聞

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