「警備甘くてHKT48メンバー狙った」 推し活で困窮、襲撃計画か

2025/12/19 05:00 

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 福岡県が拠点のアイドルグループ「HKT48」の男性スタッフら男女2人が刺された事件で、殺人未遂容疑で逮捕された同県糸島市の無職、山口直也容疑者(30)が「メンバーへの警備が甘く、殺せると思って準備していた」と供述していることが捜査関係者への取材で判明した。「推している子を含め複数人を殺すつもりだった。メンバーなら誰でもよかった」とも話しているといい、県警は山口容疑者がメンバーとファンとの距離の近さを悪用し大規模な襲撃計画を練っていた可能性があるとみている。

 捜査関係者によると、山口容疑者はホテル清掃のアルバイトなどで得た収入をHKT48などの「推し活(ファン活動)」に費やし、生活が困窮。購入した国産高級車のローン返済も滞った。「推し活で金がなくなり、死のうと思った。どうせ死ぬならメンバーを道連れにしようと考えた」と説明しているという。

 HKT48の劇場が入る福岡市中央区の商業施設や、隣接する「みずほペイペイドーム福岡」の下見をしていたとされる山口容疑者は12月に入り、包丁3本や催涙スプレーを購入。事件前日の13日、襲撃を実行するつもりでドーム1階の関係者駐車場に入ったという。駐車場はメンバーが交流サイト(SNS)用の写真を撮影するなど活動拠点の一つだったが、部外者を完全に排除するような警備はなされておらず、この日も山口容疑者はメンバーの目の前にまで近付いたとされる。だが襲撃は実行されず、「誰を殺すか考えているうちに、メンバーが通り過ぎてしまった」と供述しているという。

 改めて翌14日に襲撃を実行しようとしたが、前日の「出待ち」を把握し警戒していた警備担当の男性スタッフ(44)に「繰り返すならば出禁(出入り禁止)にする」と警告されたという。山口容疑者は14日午後5時ごろ、この男性スタッフの胸を包丁で刺したとされる殺人未遂容疑で緊急逮捕された。容疑を認めているという。

 男性スタッフは重傷を負い、その約1分後、約80メートル離れた商業施設の出入り口付近で女性会社員(27)=岡山県倉敷市=も背後から背中を刺された。女性は刃物が背骨に当たり、軽傷だった。山口容疑者は「逃げる際、そこにいたから刺した」などと関与を認める供述もしているという。県警は何の落ち度もない女性が事件に巻き込まれたとみて捜査している。【川畑岳志、金将来、栗栖由喜】

毎日新聞

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