「関東大震災型」ならM8級も 神奈川、静岡などの被害予想地図
4000万人を超す市民の生活の場であり、政治の中枢機能やグローバル経済の拠点も集まる日本の首都圏。その地下深くに目を向ければ、陸と海のプレート(岩板)が複雑に重なり合う「地震の巣」でもある。
マグニチュード(M)7~8級の大地震が首都圏を襲った時、どこでどんな被害が起きうるのか。中央防災会議の作業部会が19日に公表した新たな被害想定の報告書は、「国難」を防ぐ日々の備えと意識向上の必要性を突きつける。
◇最大280万人が家屋失う試算
報告書では、中長期的な防災対策に役立てる目的で、関東大震災(1923年)のようなプレート境界で起きる海溝型地震の被害も見積もった。切迫性の高いM7級と比べると発生確率は低いとされるが、揺れだけでなく津波の襲来も予想され、太平洋沿岸を中心に甚大な被害が見込まれる。
最悪の想定は、相模トラフで関東大震災型のM8級地震が発生したケースだ。冬の夕方、やや強めの風(毎秒8メートル)が吹く場合、火災による建物被害が増え、全壊・焼失棟数は計41万4000に上る。最大約280万人が住まいや職場を丸ごと失う計算だ。被害棟数の過半数を神奈川県内の焼失が占める。
死者は最大2万3000人と推計された。このうち1万9000人は神奈川県に集中する。太平洋沿岸に最大10メートル以上の津波が予想され、静岡県で約2000人、神奈川県で約1400人の津波犠牲者が出る恐れがある。ただし、津波の場合、地震発生後の呼び掛けで早期避難率が高まると、両県の犠牲者数は半分かそれ以下に減らせるという。
相模トラフ沿いではM8級の地震が180~590年間隔で発生するとされる。すでに関東大震災から100年以上が過ぎている。政府の地震調査委員会は、相模トラフ沿いで今後30年以内にM8級が発生する確率を「ほぼ0~6%程度」の「やや高い」と評価している。【阿部周一】
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