首都直下地震 M7級なら死者1.8万人、経済被害は83兆円と推計

2025/12/19 11:00 

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 30年以内に70%程度の確率で起きるとされる首都直下地震について、国の有識者会議は19日、新たな被害想定を公表した。マグニチュード(M)7級の地震が起きると最悪の場合、死者は1万8000人、経済被害は約83兆円と推計した。住宅の耐震化や防火対策が進んだ結果、2013年にまとめた前回想定より死者は5000人減、経済被害は約12兆円減少した。

 国は15年に策定した緊急対策推進基本計画で死者数を半減させる目標を掲げていたが、これには及ばなかった。今後、基本計画を改定してさらに対策を進める。

 有識者会議は、増田寛也元総務相をトップとする中央防災会議の作業部会。震源が異なるM7級の首都直下地震を19タイプ想定し、このうち首都中枢機能への影響が大きい都心南部直下地震(M7・3)の被害を推計した。震源が浅いと真上では揺れが大きくなりやすく、M9・0だった東日本大震災と比べて規模が小さいM6~7程度でも大きな被害が出る恐れがある。

 想定したのは、空気が乾燥し、火を使う器具の利用が多い冬の夕方(風速8メートル)に地震が起きた場合。震度6以上の揺れが襲う地域は約5000平方キロで、1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)の面積の約37%に当たる。1都4県で死者が出て、東京は最大8000人。1都4県で死者の3分の2が火災に巻き込まれて亡くなる。

 建物被害は、焼失と全壊を合わせて最大40万2000棟となり、前回想定より約21万棟減った。帰宅困難者は840万人、避難者数は徐々に増えて2週間後に480万人に及ぶ。避難生活に伴う体調悪化などで生じる災害関連死は初めて試算し、1万6000~4万1000人と幅を持たせた推計になった。

 経済被害は、建物や設備などが38兆8000億円、ライフラインや道路、港などの被害が6兆3000億円で、直接被害は計45兆1000億円。製品やサービスの提供ができなくなることによる間接的な影響の37兆5000億円と合わせ、全国で約83兆円に及ぶ。ライフラインやデータセンターの被災で東京に集中する企業の本社機能も停滞し、首都中枢機能に影響が出る恐れもある。

 当面の発生可能性は低いが、相模トラフ沿いを震源とする関東大震災型のM8級の地震も試算。最悪の場合、死者は津波による3500人を含めて計2万3000人、建物の全壊・焼失は41万4000棟に上る。【最上和喜、木村敦彦】

毎日新聞

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