大阪・道頓堀ビル火災、壁面看板で不燃材料使われず 延焼拡大要因か

2025/12/25 14:00 

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 大阪・ミナミの雑居ビルで8月、活動中の消防隊員2人が死亡した火災で、延焼拡大の一因となった壁面看板に、法律で定められた不燃材料が使われていなかったことが明らかになった。大阪市消防局の事故調査委員会が25日に公表した中間報告書で指摘した。火災の状況については、壁面看板を介して急速に延焼が広がり、爆発的な炎上が起きる「バックドラフト現象」が建物内で発生したと結論づけた。

 中間報告書によると、火災は8月18日午前9時45分ごろ発生。道頓堀川沿いに隣り合う6階建てと7階建てのビル2棟計約100平方メートルが焼け、東側の7階建てビルで活動中だった浪速消防署の消防監、森貴志さん(55)と、消防司令補の長友光成さん(22)=いずれも特別昇任=が死亡した。

 ビル2棟には当時、菓子メーカーや焼き肉店、ラーメン店の壁面看板などが掲げられ、それぞれ高さが3メートルを超えていた。

 建築基準法は繁華街などの防火地域で3メートルを超える看板を設置する場合、国が指定した不燃材料を用いるよう義務づけている。しかし市の調査で、どの看板にも防火性能を持つ素材が使われていなかったことが判明した。一部は燃えにくい素材が使われていたが、建築基準法で定められた不燃材料には該当していなかったという。

 市消防局の燃焼実験では、不燃材料を使っていない看板だと燃え広がりやすい傾向が示されたという。

 中間報告書は直接的な出火原因には触れなかった。調査委は、西側にある6階建てビルの地上付近で出た火が、近くにあったエアコンの室外機に燃え移って勢いを増し、複数の壁面看板を伝って東側の7階建てビルに燃え広がったとしている。

 死亡した2人の隊員は、東側ビルの6階部分で消火活動中だった。

 ビルの上部へ燃え広がっていた火災で5階の窓ガラスが焼損し、そこから建物内部に火が回った。5階の室内は複雑な構造で、燃焼によって酸素が不足し、一時的に火の勢いは収まった。

 しかし、午前10時13分ごろ、別の消防隊員が5階の扉を開けて進入しようとした際に外部から空気が流入。爆発的な燃焼が起こるバックドラフト現象が発生したという。

 猛烈な炎と煙が階段から一気に6階に流れ込み、隊員2人は取り残されたとみられる。司法解剖で、2人の死因は酸素欠乏による窒息死だった。

 中間報告書は事故原因について①壁面看板を介して急速に延焼が拡大。バックドラフト現象で危機的状況に陥った②6階で活動中だった2人の退路が断たれて脱出できなかった③隊員間の情報共有や連携に課題があり、救出に約2時間を要した――など、複合的な要因が重なったと総括した。

 調査委は今後、有識者の意見を踏まえて再発防止策などを盛り込んだ最終報告書を年度内に取りまとめる。

 壁面看板を設置していた菓子メーカーと焼き肉店は取材に「コメントできない」と回答。ラーメン店の担当者は「資料がなく素材の確認が取れていないため、今後調査する」と話した。【斉藤朋恵、大坪菜々美】

毎日新聞

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