土のうを使って人力だけで道路整備 京大発の取り組み、書籍に

2026/02/01 07:45 

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 20年前、土のうを使って人力だけで道路を整備する工法を、京都大の研究者らが開発した。アフリカやアジアなど、世界32カ国で実践されている。

 この取り組みを紹介する書籍「土のうの道」が福音館書店の小学生向け科学雑誌「たくさんのふしぎ」1月号(810円)として刊行され、記念イベントが2月7日に京都市南区で開かれる。刊行を発案し、絵を担当した市内在住の絵本作家・ふしはらのじこさんは「子どもも大人も読んでほしい」と話している。

 開発したのは京都大名誉教授の木村亮(まこと)さん。地盤工学が専門で、1993年からアフリカでの研究活動に関わり、ケニアに3カ月滞在した。

 現地で痛感したのは、当時8割が未舗装だった道路の問題。車の通行で路面は削られやすく、陥没し、雨季には泥沼化して通行不能となる。現地の人の生活は大きく制限されていた。

 「住民自らが補修できる簡単な方法を提供できないか」。木村さんは10年間で15回の現地訪問を重ねる中で模索し続け、現地でも入手しやすい土のう袋の活用を思いつく。

 上からの加重で土のうに圧がかかると、袋の中の土を拘束する力が生まれる。その作用により、土だけの状態で締め固めるのとは比べものにならない強度になった。京大のキャンパスに模擬道路を作って研究を重ねた。

 その結果、人力で運びやすい25キロ用の土のう袋に土を入れて、2段重ね(厚さ計約20センチ)で地面に敷き詰め、上から道具でたたき締め固めて路盤とし、さらに厚さ5センチの土で覆う工法を開発。土のうの路盤は圧縮試験機で20トンの重さに耐えることを確認した。道の両脇には排水溝も設けた。

 2005年、現地在住の日本人女性から相談を受けたパプアニューギニアで初めて実用。車1台が通れる幅の道1メートルの補修にかかる費用は500円程度、20人で作業すれば3メートル幅の道100メートルを5日で直せるという。

 木村さんはこの工法を普及させるためのNPO法人「道普請人(みちぶしんびと)」を07年に設立。25年9月末までにアフリカ20カ国、アジア6カ国、太平洋州4カ国、中南米2カ国で住民と共に計270キロの道路を整備し、研修や作業で計2万4900人が参加した。

 以前は「道路補修は大きな機械が必要で役所に任せるもの」と思い込んでいた住民が、この工法により「自分たちで解決できる」と自信を持ち、橋や水路、ため池作りにも応用するようになっているという。

 今回の書籍は、こうした経緯やエピソードを中心に、明るく優しいタッチの絵を、カラーで全40ページに掲載して分かりやすく紹介。土がなぜ固まるのかや、道路舗装の仕組みなど土木の基礎も解説し、大人も興味深く読める。

 一方、ふしはらさんは1989年と91年にザイール(現コンゴ民主共和国)で暮らし、アフリカの道路問題を実感していた。2007年に木村さんの活動を知り、自分の子どもの卒業後も絵本の読み聞かせをしていた左京区の小学校に木村さんを招いて講演をしてもらった。その後も自らが主宰する堺町画廊(中京区)で講演会や展覧会を開いてもらうなど交流が継続。「広く伝えたい」と、絵本の仕事を請けてきた出版社に提案して刊行にこぎつけた。

 道普請人の理事長を務める木村さんは「世界の貧困削減のため、土木工学者が現地でどう取り組んだのか、波及効果と共に知っていただければ」。ふしはらさんは「日本でも災害で道路が壊れ、行政による復旧に時間がかかる場合には、住民の手で特別な装備がなくても応急道路を作れると分かる」と話す。

 大垣書店と福音館書店が共催する記念イベントはイオンモール京都桂川3階のイオンホールで午後2時から。木村さんのトークと2人のサイン会がある。会場参加(1100円、定員100人)の他にオンライン(550円、最大150人)もあり、いずれも先着順で専用フォーム(QRコード)で2月6日までに申し込む。電話でも可能で、問い合わせも大垣書店イオンモール京都桂川店(075・925・1717)。【太田裕之】

毎日新聞

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