「期日前投票でなりすまし可能」 広がる懸念 超短期決戦が影響か

2026/02/06 11:00 

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 急な解散による今回の衆院選(8日投開票)では有権者に送られる「投票所入場券」の到着が全国的に遅れた。入場券なしでも期日前投票は可能と各地の選挙管理委員会が呼びかける中、交流サイト(SNS)では「期日前投票は本人確認が不十分で、なりすましが可能」と不正を懸念する投稿が広がっている。ある選管は「不審な点があれば身分証の提示を求めている。なりすまし投票は犯罪」と注意喚起するが、本人確認の運用改善を求める声も上がる。

 「期日前投票は『なりすまし』が可能です」「なりすまし放題の期日前投票」――。こんな投稿が拡散している。中には身分証がなくても期日前投票できることを紹介する動画もある。

 ◇投稿1万8000件

 毎日新聞がSNS分析ツール「メルトウォーター」でX(ツイッター)の投稿を調べたところ、高市早苗首相が衆院解散を正式表明した1月19日から2月3日までの16日間で「期日前」「なりすまし」と言及のあった投稿は1万8000件あった。昨年の参院選(7月3日公示、同20日投開票)の18日間では4560件だった。

 投稿の推移をみると、神奈川県内の複数の自治体が期日前投票の開始に入場券の発送が間に合わないことを受け、入場券も身分証の提示も不要で投票を受け付ける方針だと1月22日に報道されたことが起点となった。これに反応する形で「なりすましや二重投票を可能にする」と懸念する投稿が急増。その後も実際に期日前投票をした人から「なりすまし投票が大量に生まれそう」などと批判的な投稿が目立つようになった。超短期決戦となった今回の特徴といえる。

 ◇確認方法、規定なし

 公職選挙法は、有権者は選挙人名簿に登録されている人物だと確認を受けないと投票できないと規定する。入場券があると印字されたバーコードでスムーズに確認できるが、入場券なしでも本人確認ができれば投票可能だ。ただし、総務省選挙部管理課によると、入場券がない場合の確認方法は法律上の規定がなく、自治体によって運用が異なる。

 大阪市選挙管理委員会では宣誓書に氏名、住所などを記入してもらい、選挙人名簿と照らす方法を採用。前回の衆院選では約34万人が期日前投票を利用しており、「スムーズな運営に支障が出る恐れがある」として身分証の提示は原則求めていないという。だが、記入内容と名簿が合致しないなど不審な点があれば、提示を求めるなどして対応している。

 ◇「運用の見直しを考える必要」専門家

 公選法は他人になりすまして投票する「詐偽投票」を禁じ、2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金と定める。警察庁によると、25年7月の参院選では詐偽投票で24人が摘発された。大阪市選管は期日前投票所の入り口に警告文を掲示するなど防止策を講じており、「なりすまし投票は犯罪にあたり、処罰の対象。絶対にやめてほしい」と呼びかける。

 一般社団法人「選挙制度実務研究会」の小島勇人理事長は「なりすましを懸念し、身分証の提示はやむを得ないとの声がSNSで上がるようなら、運用の見直しを考える必要があるのでは」と指摘する。一方で運転免許証やマイナンバーカードといった顔写真付き身分証は全員が保有しているわけではないことから「身分証を持っていない人の権利を妨げず、現場も混乱しないようにするなど多角的に考えるべきだ」と述べた。【小坂春乃】

毎日新聞

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