「国産より割安」輸入米人気拡大 備蓄米放出後も見込む需要
コメの価格高止まりが続く中、国産米より割安な輸入米の需要が拡大している。農林水産省は政府備蓄米を放出してコメの値下がりを狙うが、今後も輸入米人気は続くのか。
「ベトナム産米についての問い合わせが多くなっている」。飲食店や小売店などに輸入食品を卸す「スパイスハウス」(相模原市)の高梨孝志取締役はそう話す。
併設店舗の一画に並ぶベトナム産のジャポニカ米の価格は、税込みで5キロ3240円。5キロ4000円程度の国産米と比較すると割安だ。ジャポニカ米は日本で主流の粒が小さく短い短粒種。ベトナム産でも見た目は変わらず、「味も国産米とほとんど同じ」(高梨さん)という。
同社は2024年にベトナム産米の取り扱いを始めた。業者向けを含めて200トンを10月ごろから販売開始すると、まとめ買いする一般客や外食企業などの引き合いが強く、現在の在庫は残りわずか。今では「1人1袋まで」と購入に制限を掛けているという。
農水省によると、23年度の民間輸入量は368トンだったが、24年度(1月末時点)は991トンにまで急増している。民間輸入の場合、関税が1キロ当たり341円かかるが、関税を払った上で価格に上乗せしてもなお、1キロ当たり800円程度の国産のコシヒカリなどより割安になる。
政府が管理する「ミニマムアクセス米」でも、輸入米の人気ぶりが表れている。無関税で年間輸入する77万トンのうち10万トンを主食用として入札にかけているが、24年度は7年ぶりに全量が落札された。12月の入札では、2万5000トンに対して6万4380トン分の申し込みがあり、売り渡し価格(加重平均)は1トン54万8246円(税込み)で過去最高値をつけた。スパイスハウスはこれまでミニマムアクセス米を販売してきたが、落札できなかったため初めて自ら輸入したという。
総合商社「兼松」は、25年は米国産「カルローズ」を1万トン輸入する方針だ。短粒種のジャポニカ米より大きい中粒種で、歯ごたえは硬めだが、外食産業を中心に取引先からの需要が多いという。
兼松の担当者は、備蓄米の放出でコメの値上がりが落ち着けば、「輸入量を調整すると思う」と述べるが、専門家の間でも米価が大きく値下がるとの見方は少ない。
1993年に冷夏で米不足が深刻化した「平成の米騒動」では、政府がタイ米などを大量輸入したが、翌年に収穫量が増えたこともあり結局大量廃棄されたことが社会問題化した。今回の「令和の米騒動」では、現在も続く米価の高止まりに歯止めをかけるのは容易ではなさそうで、輸入米人気もしばらく続きそうだ。【福富智】
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