ロシアとウクライナの協議開始へ 首脳会談は見送りに

2025/05/15 23:08 

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 ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領は15日、トルコ・イスタンブールでのロシアとの直接協議に応じると明らかにした。両国の代表が直接顔を合わせるのは、全面侵攻開始直後以来で約3年2カ月ぶりとなる。ただ、プーチン露大統領はゼレンスキー氏が要求していた首脳会談に応じず、高官級の協議となるため、長期的な停戦に向けた大幅な進展は期待しにくい状況だ。

 ゼレンスキー氏は15日にトルコの首都アンカラで、エルドアン大統領と会談した。ロイター通信によると、会談前には露側交渉団の構成が「お飾りだ」と不満を表していたが、エルドアン氏との会談後に協議に応じる方針を説明。ウメロフ国防相をトップとする代表団をイスタンブールに送り、一時停戦を議論するとした。停滞する停戦協議の進展に期待するトランプ米大統領に配慮した可能性もある。

 ゼレンスキー氏は会見で「ロシアは(戦争を)終わらせる必要を感じていない。政治的、経済的な圧力が十分ではないということだ」と指摘。ロシアが一時停戦を拒否した場合、米欧などに「適切な制裁」を求めるとした。高官級協議で一時停戦が合意できるなら、プーチン氏との首脳会談は不要だとの認識も示した。

 一方、ロシア側は、メジンスキー大統領補佐官を筆頭とする代表団がイスタンブールに入った。メジンスキー氏は2022年3月のイスタンブールでの前回協議でも代表団長を務めた。前駐日大使のガルージン外務次官と露軍参謀本部情報総局(GRU)のコスチュコフ局長、フォミン国防次官も参加した。

 ペスコフ露大統領報道官は米CNNにプーチン氏は参加しないと明言。米メディアが「参加する見通しだ」と報じていたラブロフ外相やウシャコフ大統領補佐官も代表団に含まれず、高官級の陣容となった。

 プーチン氏は派遣に先立ち、代表団のメンバーや外交・安全保障分野の主要高官らと対応を協議した。ペスコフ氏は15日、タス通信の取材に「今日が協議の始まりだ。今後については全て協議の進展次第だ」と述べ、協議が複数日にわたる可能性に言及した。

 「仲介役」として協議参加の可能性を示唆していたトランプ氏は15日、プーチン氏の参加見送りに失望はしていないと記者団に述べた。ロイターによると、「プーチン氏と私がそろわなければ、何も起きない」とも指摘。高官級協議では進展は見込めないとの認識を示した。

 米側はロシアとの折衝にあたってきたウィットコフ中東担当特使らを現地に派遣。ルビオ国務長官もイスタンブールに向かう方向だが、同格のラブロフ氏が直接協議に参加しないこともあり、協議に関与するかどうかは不透明だ。

 ウクライナは協議で「30日間の一時停戦」の受け入れを求める方針だ。一方、プーチン氏は「前提条件なしに交渉に臨む用意がある」として停戦の可能性も排除していないが、「紛争の根本原因の排除を目指す」として従来通りに実効支配地域の割譲などを求める構えだ。

 ロシアとウクライナの対面での直接協議は、2022年2~3月、ベラルーシとトルコで計4回実施されて以来となる。当時ロシアはウクライナの非武装・中立化などを要求。ウクライナは承諾せず、交渉はまとまらなかった。対話の機運は遠のいていたが、「戦争を終わらせる」と豪語するトランプ氏の停戦仲介を双方とも無視できず、交渉の可能性が模索されてきた。【イスタンブール金子淳、ベルリン五十嵐朋子、モスクワ山衛守剛】

毎日新聞

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