タイの元首相に438億円賠償命令 コメ買い取り制度の不正対処巡り

2025/05/22 20:34 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 タイの行政裁判所は22日、インラック元首相に対し、国に巨額の損害を与えたとして、約100億バーツ(約438億円)の賠償金支払いを命じる判決を言い渡した。在職中に「コメ買い取り制度」を巡る不正に適切に対処しなかったと認定した。地元メディアが報じた。

 インラック氏は、2006年に失脚したタクシン元首相の妹で、現政権を率いるペートンタン首相はめいに当たる。裁判の背景には、タクシン派と、軍部などとの対立があった。だが、親軍派とタクシン派政党の大連立政権の発足で状況は大きく変化し、タクシン氏は23年8月に亡命生活を終えて15年ぶりに帰国した。

 海外逃亡中のインラック氏も帰国するとの臆測が出ていたが、今回の判決で遠のいたという見方もある。

 インラック氏は11年に女性として初の首相に就任したが、軍部などとの対立が激化していった。14年に人事を巡る憲法裁の判決により失職し、その後に軍がクーデターを起こして軍事政権を樹立した。暫定議会はインラック氏に対する弾劾決議を可決した。

 コメ買い取り制度を巡っては、刑事裁判でも職務怠慢の罪に問われた。だが、インラック氏は17年に、最高裁の判決公判を前に逃亡し、本人不在のまま禁錮5年の実刑判決が出た。

 一方、タクシン氏は帰国後に在職中の汚職などの罪で実刑判決を受けて収監されたが、直後に体調不良を訴えて警察病院に搬送された。その後に国王の恩赦で減刑され、24年2月に仮釈放となった。外国要人と面会するなど活動を活発化させている。【バンコク武内彩】

毎日新聞

国際

国際一覧>

写真ニュース