トランプ氏、雇用悪化は「政治的に操作」 労働統計局長解任を指示

2025/08/02 12:31 

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 トランプ米大統領は1日、労働統計局のエリカ・マッケンターファー局長を解任するよう指示した。同日発表された7月の雇用統計の数字が予想以上に悪かったことについて、バイデン前政権下で局長に任命されたマッケンターファー氏が「政治的に操作した」と決めつけた。

 労働統計局を所管するチャベスデレマー労働長官は1日、X(ツイッター)に「心から大統領に賛同する」と投稿し、後任を探す間、副局長を局長代理に充てると表明した。

 トランプ氏は自らのソーシャルメディアで「私の考えでは、今日の雇用者数は共和党と私を悪く見せるために不正操作された」と主張したが、根拠を示していない。自らに都合の悪い結果が出たことに腹を立てたとみられる。後任選びの透明性が確保できなければ、経済指標の客観性への信頼が失われる恐れがある。

 トランプ氏は1日、自らのソーシャルメディアに「『雇用者数』がバイデン氏に任命されたマッケンターファー氏によって作成されたと知らされた。大統領選前に雇用者数を偽造し、(対立候補だった)ハリス氏の勝利の可能性を高めようとした人物だ」と投稿。「私のチームに、この政治的に任命された人物を即刻解任するよう指示した。はるかに有能な人物に置き換わるだろう」と表明した。

 さらに「このような重要な数字は公平で正確でなければならない。政治的な目的で操作されてはならない」と一方的に批判。足元の雇用環境の悪化を表す指標について「ショックだ!」との反応を示した。

 労働統計局によると、マッケンターファー氏は2023年7月にバイデン前大統領に指名され、上院の承認を経て24年1月に16代局長に就任した。労働経済学を専門とし、財務省や国勢調査局など連邦政府機関に20年以上仕えてきた。

 労働統計局が1日発表した7月の雇用統計(速報、季節調整済み)によると、景気動向を敏感に示す非農業部門の就業者数は前月比7万3000人増にとどまり、市場予想(10万8000人増)を下回った。また、5月と6月の就業者数を大幅に下方修正し、当時の発表に比べ実際には計25万8000人少なかったと発表した。

 これを受け、1日のニューヨーク株式市場ではダウ工業株30種平均が一時700ドル超下落した。トランプ政権の大規模関税などで米経済が悪化し、雇用環境にまで影響が及んでいるとの不安が広がったためだ。

 雇用統計は、米国の労働市場の現状を評価するための重要指標。世界の投資家が毎月の発表に注目しており、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策にも大きな影響を与える。

 労働統計局は、雇用統計と並ぶ重要指標である消費者物価指数(CPI)も毎月発表している。FRBはトランプ政権の関税によるインフレ再燃を警戒して政策金利を据え置いているが、トランプ氏は「インフレは起きない」と主張し、パウエル議長を罵倒しながら早期利下げを迫っている。【ワシントン大久保渉】

毎日新聞

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