豪政府、外国人350人をナウルに強制移送へ 見返りに巨額援助

2025/09/09 06:45 

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 オーストラリア政府は、難民申請が不認定になるなどして在留資格を失った外国人約350人を、南太平洋の島国ナウルに移送することで合意したと発表した。豪政府は見返りとしてナウルに最大約25億豪ドル(約2500億円)を支払うとされ、人権団体からは「難民を遺棄している」と批判が出ている。

 バーク豪内相は8月末にナウルを訪れ、アデアン大統領と覚書を交わした。その後、「有効なビザを持たない者は国(豪州)を離れるべきだ。これはビザ制度を機能させるための基本的な要素だ」との声明を発表した。アルバニージー豪首相も1日、豪公共放送ABCの番組で「これは国益を守る措置だ」と説明した。

 豪メディアによると、移送対象は過去の犯罪歴などを理由に難民申請が認定されず、在留資格を失ったものの、紛争や迫害で母国に強制送還できない外国人らとされる。ABCによると、多くは暴行や性犯罪で有罪判決を受け、刑期を終えた後も無期限で当局の施設に収容されていたという。

 ナウルとの合意を受け、豪議会は4日、第三国への強制送還手続きを簡略化する法案を可決した。ただ、合意の詳細が不透明なことや、性急な審議への懸念も出たほか、一部の議員からは「ナウルを流刑地にしようとしている」との批判もあった。

 ナウルの人口はおよそ1万1000人。ロイター通信によると、経済効果に期待する声がある半面、「どんな人が来るのか」などと不安の声も上がっているという。

 ニュースサイト「オーストラリア・ガーディアン」によると、対象者には犯罪歴がない人や、高齢者も含まれている。豪難民支援団体は、今回の合意を「米国のトランプ大統領流」だと非難。トランプ米政権も、北アフリカ・リビアなど第三国への移民の送還計画があると報道されている。

 豪州では在留資格のない外国人の長期収容が問題化してきた。2023年には最高裁が「無期限の収容は違法」と判断し、数百人が収容施設から解放された。

 代替策を模索した豪政府は24年、強制送還を受け入れる第三国に、金銭を支払うことを認める新法を可決した。今年2月には男性3人をナウルに送還する計画を公表したが、男性らが裁判所に異議申し立てしたため、手続きは停滞していた。【バンコク国本愛】

毎日新聞

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