男性が結婚で改姓できないのは「違憲」 南ア最高裁が「性差別」指摘

2025/09/13 19:35 

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 南アフリカの憲法裁判所(最高裁)は、原則として夫が妻の姓に改姓できない現行法は性差別を禁じる憲法に違反するとして、国会に法改正や立法措置を講じるよう命じた。南アでは法律で選択的夫婦別姓が認められている。ただ同姓にする場合は男性側に合わせる義務があり、これを見直すように求めた。

 憲法裁は法規定が「植民地支配の輸入品」で、不当な性差別だと指摘した。判決は11日付。

 アパルトヘイト(人種隔離)政策下の1992年に定められた南アの出生・死亡登録法は、出生時に登録した姓を変更できるのは、原則として女性が結婚・離婚した場合や夫と死別した時などに限られ、男性の改姓は認められていない。

 原告の夫婦2組は、同法の規定が家父長的なジェンダー規範を固定化し、性別に基づいて恣意(しい)的に区別していると主張。94年のアパルトヘイト終結後に制定された憲法の平等条項を侵害していると訴えた。

 原告のうち1組の夫婦は女性側の亡くなった両親との家族的なつながりを守るため、男性が改姓を希望。2021年に結婚したが、内務省から男性の改姓は不可能だと告げられた。別の夫婦も、一人っ子である女性の姓を維持するため、男性が女性の姓と組み合わせた複合性を申請した。しかし、男性側の改姓は認められなかった。

 判決によると、多くのアフリカ文化で女性は婚姻後も出生時の姓を変えず、子も母の氏族名を受け継ぐことが多かった。しかし「欧州からの入植者とキリスト教宣教師の到来、西洋的価値観の押し付け」によって、妻が夫の姓を名乗る「伝統」が根付いたと指摘した。この慣習はオランダで16~18世紀に発展したローマ・オランダ法に存在し、植民地支配下にあった南アにもコモンロー(慣習法)として取り入れられたという。

 憲法裁は「配偶者の姓を名乗ることは多くの人にとって自己を規定する上で極めて重要な意味を持ち、その選択の可能性を禁じることは自己実現を妨げる」と指摘し、法規定が平等権の侵害に当たると結論づけた。

 地元メディアや英公共放送BBCによると、訴訟に参加した法曹団体は「法律は女性に認められている選択肢を男性から奪うことになり、有害な固定観念を助長する」と主張した。シュライバー内務相らは判決後、法規定が時代遅れであると認めた。【古川幸奈】

毎日新聞

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