米連邦政府の一部機関閉鎖問題で、トランプ政権は１日、野党・民主党が重視してきた事業を凍結する報復措置を公表した。共和、民主両党の妥協のめどが立たない中、政権は政府閉鎖を逆手に取り、民主党への圧力を強める構えだ。

　ホワイトハウスのボート行政管理予算局長は１日、Ｘ（ツイッター）で、連邦政府が助成した東部ニューヨーク州のトンネルと地下鉄の整備事業費計約１８０億ドル（約２兆６５００億円）を凍結したと表明した。

　事業はバイデン前政権下で、老朽化した鉄道インフラを更新する国家的なプロジェクトと位置付けられてきた。ニューヨーク州は民主党の優勢地区であり、党のシューマー上院院内総務とジェフリーズ下院院内総務も同州出身。幹部２人を狙い撃ちしたとみられている。

　米運輸省は１日の声明で、一連の契約にＤＥＩ（多様性、公平性、包摂性）に関連する違反がないかを調べる必要があるにもかかわらず、政府閉鎖で審査ができなくなったと説明した。「急進的な民主党の無謀な決定による不幸な結果」だとも述べた。

　エネルギー省も１日、クリーンエネルギー関連の事業で３２１件の財政支援を終了し、約７５億６０００万ドル（約１兆１０００億円）を「節約」したと発表した。ＣＢＳテレビによると、影響を受けるのは西部カリフォルニア州など２０２４年大統領選でハリス前副大統領がトランプ氏に勝利した１６州で、政治的な報復の意味合いが強い。

　トランプ政権は今回の閉鎖を、そのまま恒久的な政府機能縮小につなげようとしている。米政治メディア「ポリティコ」によると、ボート氏は１日、共和党議員に「１～２日以内」に大幅な連邦政府職員の削減に着手すると伝えた。

　一方、米連邦上院は１日、一部閉鎖に陥った連邦政府機関の再開を目指して予算審議を行った。ただこの日も与野党は合意に至らず、上院での審議は３日以降に持ち越しとなった。

　民主党は予算案賛成の条件として年末で期限切れとなる医療費助成の延長などを求めており、シューマー氏はＸで「トランプと共和党は米国民の医療を守る気がなく、政府を閉鎖した」と非難した。

　閉鎖が始まった１日、米国の主要な行政サービスは手元の資金などで維持され、目立った混乱は見られなかった。ただ、長期化すればサービスの停止や遅延が広がる恐れがある。本格的な影響は来週以降に出てくる可能性がある。【ワシントン金寿英、浅川大樹】