「熱い」戦いは論戦だけじゃない? 空調無し投票所の暑さ対策に苦慮
物価高対策や米政権による関税措置への対応などを争点に熱い戦いが展開される第27回参院選。投開票日の20日に向け、候補者や政党関係者は生き残りをかけた論戦を繰り広げている。投票を促す啓発に力を入れる市町村区選管は珍しくないが、一方で人の生死につながりかねない大きな課題ともいえる「熱中症対策」に規則の改正などに伴った変化もみられる。それは……。
◇凍結ドリンク配布
「ペットボトル入りの水とスポーツドリンクを凍らせ、投票所へ午後1時ごろまでに手分けして届けます」。
徳島市選管の玉成雅信事務局長補佐が示したA4判の送付先一覧表には投票所名や所在地、届ける本数などが並んでいた。だが、その届け先は26カ所と市内に設ける投票所63カ所の4割強だ。水の本数も10や13といった数字が並ぶ。
公選法の規定などから、投票所には投票管理者と職務代理者各1人、投票立会人2~5人に加え、作業従事者を配置する必要がある。投票所への物資送付は、投票管理者や職務代理者、投票立会人、事務従事者向けに計画された「熱中症対策」だ。だが、熱中症対策なら、全投票所に配っても良いように思うが……。
◇多くは運動施設
送付先一覧表の「投票の場所」の欄には、「体育館」「武道場」「体育室」といった運動施設が目立つ。そう、学校内運動施設の多くには空調設備がないのだ。
学校内の運動施設を巡っては、児童生徒の熱中症対策のため、各自治体で空調整備の取り組みが増えつつあるが、未整備のケースも少なくない。このため、そういった施設では、猛暑の時期には、生暖かい空気が充満することも珍しくない。
徳島市では6月15日以降の16日間のうち計13日間も最高気温が30度以上となる真夏日となった。7月は梅雨が明けたこともあり、連日30度を突破し、6日には35・9度と猛暑日に。このままなら、投票日の20日も最高気温が30度を超えても不思議ではない。空調がなく、風通しも悪い体育館なら、命を危険にさらしかねない過酷な空間となる。
だが、この状況は昨日今日始まったことではない。徳島市選管は前回2022年参院選の際、空調のない投票所には、投票管理者にあらかじめ、大型扇風機を希望するか尋ね、1施設に1~3台をレンタル会社から借りて、配備した。
ではなぜ、今回氷結した飲料水配布と対策を強化するのか――。
◇投票所も「職場」
それは、6月から厚生労働省が労働安全衛生規則を改正し、熱中症対策強化を打ち出したからだ。規則改正は熱中症による死亡災害の多発を踏まえ、職場での対策強化を図るのが狙い。対象を気温31度以上で連続1時間、または1日4時間を超えることが見込まれる作業としており、原則午前7時から午後8時まで開設される投票所スタッフなら該当する可能性が大きい。
このため、市選管は投票所も「職場」と見なして、空調のない投票所スタッフの熱中症対策を強化することにした。まず、校内で空調設備のある図工教室の使用が可能と判明した徳島市助任小学校(同市下助任町1)の投票所を従来の体育館から変更したほか、大型扇風機も空調の無い全施設に配備する方針に変更したうえ、投票管理者に希望台数を尋ねた。さらに、叩くと冷たくなる瞬間冷却剤や塩分補給あめも投票所に準備するほか、凍結した水やスポーツドリンクを選管職員が6班態勢で26投票所に配布する。
◇高齢のスタッフも
投票所スタッフの構成も市選管が対策を強化する理由だ。市職員が務めることの多い、投票管理者や職務代理者、作業従事者に対し、投票立会人は比較的年配の民間人が務めることも多く、市選管は過酷な環境での長時間の立ち会いで体調を崩すことを恐れる。今回空調のない投票所のスタッフには投票立会人を務める80代は少なくとも3人いるという。
厚生労働省などは熱中症対策として空調の活用を挙げるほか、喉が渇いていなくても水分塩分の定期的補給を促す。高齢者については、▽若年者よりも体内の水分量が少ない▽暑さに対する感覚機能が低下している▽暑さに対する体の調節機能が低下している――として、「特に注意が必要」と呼び掛ける。
だが、空調がない投票所では、水分や塩分の補給といった対策しかない。このため、市選管は7日の投票管理者向け説明会で、スタッフに水分補給を促すなどの注意を払うよう求めた。
◇選管からの応援も
市選管が各投票所に配置する投票立会人は法定下限の2人だが、万が一体調を崩した場合、投票管理者が作業従事者から投票立会人を現場で選任し、投票所の開設を維持する方針だ。体調不良者が続出した場合、市選管事務局で待機している十数人の職員から投票所へ応援要員を派遣する方針という。
玉成事務局長補佐は「投票日にどれくらい暑くなるか想像もつかず、考えられる対策を講じる。(対策が功を奏し)当日は何も起こらないことを祈っている」と話している。
◇有権者多い県庁所在地の悩み
徳島市選管の悩みは人口規模が似通った自治体で共通する。徳島市のほか、高松市や松山市、高知市といった県庁所在地では、1投票区の有権者が多いため、投票所に使える施設が限られてくる。多数の有権者が投票に来ても対応できるよう、一定規模の空間が欠かせないほか、バリアフリー対応や駐車場の確保も必要で、小中高校の体育館を活用するケースが多い。だが、学校内運動施設の空調は多くの自治体で整備途上だ。
このため、3市選管は、投票所へのスポットクーラー配備(高知市)のほか、冷却スプレー(松山市)や冷感タオル(高松市)などの配布を計画する。
高知市選管の担当者は「3年前の参院選は7月10日投票だったが、かなり暑かった。今回の投票日は20日と前回より10日間も夏に近づくわけで、さらに暑くなる恐れがある」と警戒している。【植松晃一】
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