理想と現実、試される柔軟さ 高市首相の所信表明、際立つ「安倍色」

2025/10/24 14:32 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 高市早苗首相が24日に臨んだ初の所信表明演説には、首相が抱く「理想」と、少数与党として直面する「現実」への苦悩が入り交じる。

 際立つのは、首相が政治の師と仰ぐ安倍晋三元首相を想起させる「安倍色」と、安全保障を重視して「強さ」を前面に押し出す保守的な内容だ。

 「強い経済を作る」「力強い外交・安全保障」――。演説原稿には、文中の見出しを含めて「強い」が計10回、「安全保障」は計18回も登場した。

 「強い~」は安倍氏が演説で多用した言い回しだ。第2次安倍政権で初の所信表明演説(2013年1月)では「断固たる決意をもって、強い経済を取り戻す」と呼びかけ、場内から喝采を浴びた。首相が演説で2度にわたって言及する「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」も安倍氏が好んだ言葉だ。表現を含め、後見役だった安倍氏の政治手法を強く意識しているのだろう。

 最優先課題は「物価高対策」とし、経済重視を強調する一方で、政策面で最も踏み込むのは安保政策だ。国家安全保障戦略などの安保関連3文書について、来年中の前倒し改定を目指すなどと表明した。

 だが、「安倍1強」と言われた安倍政権と、少数与党に転落した現在では政治状況は大きく異なる。演説では、日本維新の会が掲げる副首都構想や社会保障改革など新たな連立相手の看板政策や、野党と合意した政策の説明に多くの時間を割いた。「政治の安定」に向けて、野党の政策提案に「柔軟」に向き合う考えも強調した。

 理想と現実に向き合い、強さに柔軟さを織り交ぜながら政治を前に進められるのか。首相の政治手腕が試されることになる。【飼手勇介】

毎日新聞

政治

政治一覧>

写真ニュース