「全国からの理解、かなり無理が…」大阪都構想で新協議体、苦言も
大阪府の吉村洋文知事は23日、副首都にふさわしい都市の姿を議論するため、来月にも大阪市と合同で新たな協議体をつくり、市を廃止して特別区を設置する「大阪都構想」を検討課題とする考えを表明した。議員や有識者の参加を求め、府と特別区の組織体制や事務分担を議論するという。年明けに本格化する与党の副首都法案づくりと並行して進めることで、議論をリードする狙いがあるとみられる。
この日、府・市がまとめた「副首都」に関する国への要望では、経済規模などの観点から大阪を副首都の「適地」とし、副首都の機能を果たすには、成長戦略やインフラ整備などの広域行政を一元化する必要があると指摘。その手法として、地方自治法上の事務委託や調整会議などと比較して、大都市地域特別区設置法(大都市法)による特別区が「最も制度的に安定性がある」と明記した。
吉村氏は「副首都庁合同庁舎」(仮称)や防災庁、総務省消防庁、文部科学省の地方拠点の整備などと合わせて年明けにも国に要望。与党の副首都法案で、特別区の設置を副首都の指定要件とするよう働きかける考えを示した。
◇副首都要件「特別区」には異論根強く
ただ、大阪都構想は2015年と20年の住民投票で2度否決されており、特別区を副首都の要件とすることには異論が根強い。自民党は大阪府連が副首都と都構想を切り離すよう求めているほか、名古屋市の広沢一郎市長は22日の記者会見で「名古屋市は副首都にふさわしい。できるだけ早く国に伝え、当然手を挙げていきたい」と述べる一方、「特別区を前提とすれば手が挙がらなくなる」と語った。
府・市が国への要望をまとめた23日の会議でも、特別顧問を務める上山信一・慶応大名誉教授が「大阪による大阪のための副首都論としては非常によく書けているが、全国の方に理解されるかというと、かなり無理がある」と苦言を呈した。
吉村氏は20年の住民投票否決後、「僕自身が政治家として(都構想に)再挑戦することはない」と明言。23年の知事・市長ダブル選でも都構想を公約に掲げなかったことから、3度目の住民投票に進むには、選挙など住民の意思を確認する「民主的プロセスが必要」だと説明してきた。
住民投票の実施には、大都市法に基づいて設置した法定協議会で、府と特別区の組織体制や事務分担、財政調整などを記した制度案(協定書)を作成する必要がある。
23日、報道陣から法定協を設置せずに都構想の議論を始めることの正当性を問われた吉村氏は、「法定協を立ち上げるのであれば民主的なプロセスが必要だが、副首都にふさわしい行政機構とはどういうものか検討を深めるというのは、やってはならないことではない」と主張。府・市が設置する新たな協議体での議論は、法定協で「活用できるところは活用すればいい」と述べた。
副首都構想は、吉村氏と大阪市長の横山英幸氏が代表と副代表を務める日本維新の会が大阪を前提に主張。自民との連立政権合意書に、来年の通常国会で法案を成立させると盛り込まれた。維新は今年9月、副首都の指定には特別区の設置が必要とする法案の骨子案を取りまとめていた。【鈴木拓也、宮本翔平、加藤明子】
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