耳の底に心のぬくもり残るよう 僧侶、「刑務所ラジオ」500回超
富山市の曹洞宗清源禅寺の住職、川越恒豊(こうほう)さん(84)は、同市の富山刑務所内で毎月放送される番組「730(ななさんまる)ナイトアワー」のパーソナリティーを1979年12月から45年間務めてきた。今年6月には放送回数が500回に達した長寿番組だ。川越さんのぬくもりのある言葉が、更生に向かって歩む受刑者らを励ましている。
川越さんは昭和50年代、週に3回オンエアされる地元ラジオ局の番組でパーソナリティーを務めていた。「アナウンサーだけの放送では型にはまってしまう」と、オファーを受けたのがきっかけだった。現在も使っているマイクネームの「方丈豊」は、その時に命名したものだ。
禅寺の住職を務めながらの出演だったが、学生時代に子供たちを相手に紙芝居の読み聞かせなどをしていた経験が役立ったという。
一方、富山刑務所で、受刑者らに道徳や倫理、宗教の講話を行う「教誨(きょうかい)師」も務めていた川越さん。職員から「受刑者に心のぬくもりを伝える放送を所内で始めたい」と声を掛けられ、「730ナイトアワー」が誕生。全国初の「刑務所ラジオ」としても注目された。
◇「いい加減な気持ちではしゃべれない」
番組は、毎月最終月曜日の午後7時半から1時間半放送される。受刑者から届くメッセージを紹介し、リクエスト曲を流す。毎回テーマが決まっており、受刑者からのメッセージは平均30~40通届くという。これまで「感動」「母の思い出」といったテーマがあったが、500回目は「私の応援ソング」だった。
番組に臨む心構えについて、川越さんは「聴き手の耳の底に残るよう、言葉の親切さを心がけている。いい加減な気持ちではしゃべれない」と語る。メッセージの中に輝くような言葉があれば「よく書けた」と励ます。番組は受刑者の自由時間に放送されるが、中にはメモを取りながら聴く人もいるという。
川越さんは小学生の頃、体が弱く、学校を休みがちだった。運動会や遠足にもあまり参加できなかったが、同級生は黒板に書かれた授業の内容を教えてくれたりした。「友達に自分は助けられた。その時の感謝の気持ちを返したい」という思いで奉仕活動を続けてきたという。「一人では生きていけない。一人で生まれてきたわけではない」。放送を通じて、共感することの大切さを伝えたいと力を込める。
出所後も手紙などを送ってくれる熱心な“元リスナー”もいる。中には、補助輪を外して自転車の練習をする我が子を紹介しながら、自身の社会復帰を重ね合わせているような報告もあったという。
番組がスタートしておよそ半世紀。「もう一度原点に戻って、しゃべれる限り続けたい」。楽しみにしてくれているリスナーのために、これからも元気にマイクに向かう。【浜名晋一】
◇人物略歴
◇川越恒豊さん
1941年、富山市出身。駒沢大を卒業後、永平寺で修行し、実家の清源禅寺住職に。70歳まで保護司や家事調停委員も務めた。趣味は古典落語を聴くこと。
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