他人の人生、ちょっとのぞくと 神奈川・藤沢に「手帳類図書室分室」

2025/09/01 15:58 

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 縁もゆかりもない他人の人生を、ちょっとのぞいてみませんか――。日記や手帳、家計簿といった見知らぬ個人の記録を読むことができるスペース「手帳類図書室分室」が、神奈川県藤沢市亀井野にオープンした。「本室」は東京都渋谷区にあり、利用者だった女性がその面白さを広めようと地元で開設した。

 分室を開いたのは小学校で非常勤講師を務めるナオエダカナコさん(50)。2年ほど前、渋谷区にある「手帳類図書室」を知り、通うようになった。収められている日記や手帳類はコレクターが収集した約400冊。料金を支払い、他人の日記などを見て別の人生を垣間見ることができる面白さに引きつけられたという。

 ナオエダさんは中学時代から日記を書き、読んだ本や鑑賞した映画の感想を記し続ける「記録好き」。本室に自らの「読書日記」を寄贈するうちに、地元に分室を作りたいと考えた。コレクターが収集した手帳類は計約2000冊あり、その一部を借り受けて今年7月、知人のオフィスを借りてオープンにこぎつけた。

 収集された日記や手帳は、就職や結婚といった人生の節目で整理する際に「捨てるには忍びない」と寄贈されるケースも多いという。

 恋人との日常がつづられている恋愛日記や仕事のつらさを書き記したもの、値段とともに書かれた買い物の記録など、昭和から令和までの多様な記録が集められている。銀行の口座番号やパスワード、電話番号といった情報は削除するが、名前を公表するかどうかなどは提供者の判断に委ねているという。

 「他人に見せない前提で書かれた内容は赤裸々で、その人の人生を追体験できる。自らの生活や人生、創作活動のヒントになったりもする」とナオエダさんは語る。

 実際、来室者からは「終わりのないドラマを見ているようだ」「一人ひとりの人生を遠くから俯瞰(ふかん)して見せてもらった感じがする」などの感想が寄せられているという。

 分室には現在約180冊が収められており、書かれた年代や性別、内容の要約が記された目録を見て、来室者が読みたい日記や手帳を選ぶ。ナオエダさんは「今後も冊数を増やし、この魅力を感じてもらえる人に届けていきたい」と話している。

 開室は毎週木、金、土曜日の午後1時から同5時。利用料は1100円から。問い合わせはtechorui.bunshitsu@gmail.comへ。【澤圭一郎】

毎日新聞

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