線状降水帯からマイカーを守るには 車をくるんで守るシートも

2025/10/01 14:30 

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 8月に熊本県などを襲った大雨では、車の浸水被害が相次いだ。線状降水帯による雨が短時間に集中的に降り、高台に車を移動させる暇さえなかったことが要因とみられる。熊本は車社会で日常生活にマイカーが欠かせず、カーシェアによる支援も台数が足りていない。台風などと比べ事前の予測が難しい線状降水帯からマイカーをどう守ればいいのか。

 ◇短時間に雨集中、車被害相次ぐ

 「別の地域に線状降水帯の予報が出ていたと思い、完全に油断していた」。大雨で車2台が水没した熊本市西区松尾の会社員男性(34)は悔しそうに語った。

 大雨の日、近くに住む母親からの電話で、周囲の水位が上昇していることに気づいた。水没した2台のうちの1台は、500万円以上の人気四駆車。納車してまだ3カ月だった。男性は「ここまで降るのであれば車を高台に避難させていたのに」と諦めきれない心境を吐露した。

 今回の大雨は短時間に雨が集中し、男性と同じように車が被害に遭うケースが相次いだ。JAF熊本(熊本市)には8月11日~31日に「車が水没して動かない」などの相談が2288件寄せられたという。市町村別では半数以上の1337件が熊本市からだった。JAFの担当者は「レンタカーもディーラーも車が足りていない」と話す。

 ◇大雨、熊本県内で事故受付は1万件超

 保険会社でつくる一般社団法人「日本損害保険協会」によると、一連の大雨で熊本県内では1万2778件(8月29日現在)の事故受付があったという。担当者は「任意の車両保険に加入している方からの件数なので、車両保険に加入していない被災車両を考えるともっと大きな数字になるのでは」と話す。

 膨大な被害に支援も追いつかない状況が生まれた。「カーシェア」で被災者支援を続ける「日本カーシェアリング協会」(宮城県石巻市)の担当者も「人口の多い都市部での大雨だったためここまで車両被害が拡大したのだろう。被災者も多く、カーシェア利用者に対して貸し出しができる車が全く足りていない状況」と明かす。

 車の水没は他の地域でも発生しており、三重県四日市市では9月に集中豪雨が発生し、近鉄四日市駅前の地下駐車場「くすの木パーキング」で車両274台が水没した。JAFは車を守るために大雨に関する情報を事前に確認し、低い土地や河川沿いなどから車を移動させることが重要とみるが、各地の被害は車を守り切る難しさも感じさせる。

 ◇手軽に車守るグッズ開発

 こうした中、より手軽に車を守る商品も開発されている。福岡市南区の蔵田工業は車をくるんで水から守るシート「AQ Barrier(エイキューバリア)」を販売。1人でも10分以内でくるむことができ、自宅敷地など普段の駐車場で利用できる長所がある。

 シートはJAFが9月23日に北九州市八幡西区で開いたセミナーで実演された。蔵田工業の担当者は「災害時の移動手段として車は欠かせないので、シートが早期復旧に役立ってほしい」と話した。【野呂賢治、中里顕】

毎日新聞

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