トランプ米大統領は２０日、バイデン前政権が推進したＤＥＩ（多様性・公平性・包括性）施策を廃止する大統領令と、連邦政府として認める性別は変更不可能な男性と女性の二つだけであるとする大統領令に署名した。

　トランプ氏は就任演説で「今週、私は公私のあらゆる側面で人種や性別を社会的に操作しようとする政府の政策も終わらせる。我々は肌の色にとらわれない、実力主義の社会を築く」と述べた。

　大統領令は、バイデン政権のＤＥＩの取り組みを「違法かつ不道徳な差別プログラム」と批判し、「全ての人に平等な尊厳と敬意をもって奉仕し、米国を偉大にすることだけに貴重な税金を費やすことに尽力する政府がふさわしい」と説明。連邦政府の雇用手続きや研修方針などで全てのＤＥＩプログラムを終了するよう求め、政府内のＤＥＩ職を６０日以内に終了させるべきだとした。

　米国では近年、保守活動家から圧力が高まっていることなどを受け、小売り最大手ウォルマートがＤＥＩに基づく行動基準を縮小したほか、自動車大手のフォード・モーターや二輪車メーカーのハーレーダビッドソンなどがＤＥＩ施策の取りやめを発表している。連邦政府は３００万人の雇用を抱えており、大統領令の影響は大きい。

　また、トランプ氏は演説で「本日より、性別は男性と女性の二つだけであることを今後の米国政府の公式方針とする」と語った。

　その後に署名した大統領令では「女性は生物学的に女性であり、男性は生物学的に男性であると認識する明確で正確な言葉と政策を用いることで、女性の権利を擁護し、良心の自由を守る」と言明。政府として「ジェンダー（社会的・文化的な性）」ではなく「セックス（生物学的な性）」という用語を使うとした。

　パスポートやビザなど政府が発行する身分証明書は、変更不可能な生物学的な性に基づくものにすることを義務づけた。【ワシントン西田進一郎】