韓国の情報機関・国家情報院（国情院）は１１日、国会の委員会で、北朝鮮の金正恩（キム・ジョンウン）朝鮮労働党総書記と、その娘のジュエ氏について、中国訪問の際に「生体情報の流出を避けるため、万全を期していたことが確認された」と説明した。国情院はジュエ氏が正恩氏の後継者候補とみており、北朝鮮当局が毛髪や廃棄物、皮膚片などを他国の情報機関などに奪われるのを防ごうとしたと分析している模様だ。

　正恩氏は９月２～４日、「抗日戦勝８０年」記念行事に出席するため北京に滞在。平壌から北京駅に専用列車で到着した際、ジュエ氏が正恩氏の真後ろにいる様子を北朝鮮国営メディアが報じた。また北朝鮮の国営テレビでは、正恩氏が北京の北朝鮮大使館を訪問した際、ジュエ氏が同行する様子も放映された。

　国情院は、ジュエ氏が「訪問期間中、大使館に滞在して外部への出入りを控えていた」と指摘。正恩氏とジュエ氏に関連した「物資や廃棄物が運ばれる様子が確認された」という。健康状態や遺伝子情報の流出を防ぐため、使用済みの物品や排せつ物などを北朝鮮に持ち帰った可能性がある。

　韓国メディアによると、正恩氏がロシアのプーチン大統領と北京で会談した際も、終了後に北朝鮮の随行員とみられる人物が、正恩氏の座った椅子やテーブルなどを入念に拭いていた。生体情報の流出阻止のためとみられる。

　国情院は、正恩氏の訪中に同行するジュエ氏の様子が、労働新聞など北朝鮮の一般市民向けの報道で伝えられたことを重視。「（ジュエ氏は）有力な後継者の立場に必要な革命のストーリー（の素材）は十分に確保した」と分析した。ただ、韓国の専門家の間では「ジュエ氏が正恩氏の後継者に決まったとみるのは早計だ」との見方も根強い。【ソウル福岡静哉】