水素で動く船に空飛ぶクルマ 大阪万博で体験「近未来の乗り物」

2025/03/13 09:00 

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 大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)(此花区)を舞台に開かれる2025年大阪・関西万博は、4月13日の開幕まであと1カ月。1970年の大阪万博では、動く歩道やモノレールが人々の注目を集めたが、今回の万博にも最新技術を駆使したさまざまな「近未来」の乗り物が登場する。さあ、あなたは何で行く?

 ◇旅客用は国内初 水素燃料電池船

 かつて水運で栄え、「水都」と呼ばれた大阪。25年万博では、地元創業の岩谷産業が開発した水素燃料電池船(全長33メートル、全幅8メートル、177トン)が登場し、市中心部と夢洲をつなぐ。旅客用の水素燃料電池船の運航は国内初。

 古事記で倭建命(やまとたけるのみこと)が詠んだ和歌にちなみ、「まほろば」と名付けられた。「素晴らしく、住みやすい場所」との意味がある。

 水素は水をはじめさまざまな資源から取り出すことができ、利用時に二酸化炭素(CO2)を排出しないため、環境に優しく、次世代エネルギーとしての期待が高い。

 船が動く仕組みは、電気で水を水素と酸素に分ける「電気分解」の逆で、水素と酸素の化学反応で発電し、モーターを動かす。船内には約130キログラムの水素を搭載可能で、発電した電気をためる蓄電池が設置されているほか、外部からの充電でも航行できる。一般的なディーゼル船に比べて臭いや騒音、振動が少ないのも魅力だ。

 先進的なデザインも見どころの一つ。2階建ての青みがかったグレーの船体は、自動車メーカーのプジョー・シトロエンなどでも活躍したカーデザイナー、山本卓身さんが手掛けた。架空の生き物が四肢で海上を闊歩(かっぽ)する様をイメージしたという。

 岩谷産業水素本部水素バリューチームの佐野雄一部長は「水素が乗り物を動かす力になっていることを体感してもらえれば。万博会場に向かうお客さんのワクワクする気持ちを高めたい」と話す。

 同社は水素が普及する未来社会を見据え、関連設備やシステムの実証にも取り組む。大阪湾に面した関西電力南港発電所(住之江区)に、水素や電気を船に補給する専用ステーションを整備。関電や東京海洋大とともに、水素や電気の消費量データを蓄積・分析して、効率的な水素の補給や航行につなげる。

 「まほろば」は定員150人。期間中は毎週火、金、土曜、ユニバーサルシティポート(大阪市此花区)と夢洲を約30分で結ぶ(片道大人3000円)。同ポートと4月にオープン予定の「中之島GATEサウスピア」(同市西区)間でも運航予定。予約は公式サイト(https://mahoroba2025.book.ntmg.com)。

 ◇いよいよ登場 空飛ぶクルマ

 「空の移動革命」として注目を集める「空飛ぶクルマ」。国内初を目指した客を乗せて飛ぶ「商用運航」は許認可のハードルが高く実現しなかったが、開発競争でしのぎを削る国内外のメーカーなどが夢洲上空でのデモンストレーション飛行を計画している。

 空飛ぶクルマは、一般的に「電動」「垂直離着陸」などの特徴があり、乗員は1~5人程度。地上走行用のタイヤはない。形状から主に2種類に分類される。一つは、ドローンに似た複数の回転翼を持ち、機体がコンパクトで小回りが利く、短距離移動に適したタイプ。もう一つは、飛行機のような固定翼を備え、効率的な飛行が可能で、中距離の移動にも活用できるタイプだ。

 万博には4事業者が参加。中でも、日本の新興企業「スカイドライブ」(愛知県豊田市)が開発した「SD―05」は、万博で初めてデモ飛行が一般公開される。軽くてコンパクトな機体が特徴で、離陸可能な総重量の最大値は1・4トンと一般的なヘリコプターの半分程度。全長は11・5メートルで、部品数もヘリの約10分の1の1万~2万点という。

 比較的耐荷重が小さい建物の屋上などにも離着陸可能なことから、同社の担当者は「ゆくゆくはタクシーのように気軽に利用できるようにしたい」と話す。

 万博では他にも、米国と英国でそれぞれ開発された機体が夢洲や周辺を舞う予定だ。

 将来、空飛ぶクルマの安定的な運航が実現すれば、都市部での渋滞を避けた移動や災害時の救急搬送などで活用が見込まれる。大阪では、万博を足掛かりに事業化を目指す動きも出ている。大阪メトロとスカイドライブは、大阪市内の四つのエリアを結ぶ「大阪ダイヤモンドルート構想」を打ち出し、2028年の一部事業開始を視野に入れる。【妹尾直道、村上正】

 ◇交通案内

 万博会場への交通手段は鉄道、バス、船などが挙げられる。自家用車の乗り入れはできない(予約制の障害者用駐車場利用の場合を除く)。

 新幹線が止まる新大阪駅からは、JRの在来線で桜島駅まで乗り継ぎ、同駅発のシャトルバスで約15分(運賃350円)。地下鉄は大阪メトロ新大阪駅から御堂筋線で本町駅に向かい、中央線に乗り換えて終点・夢洲駅で下車。所要時間は約45分(同430円)。

 新大阪の他、大阪、難波など主要各駅や関西国際、大阪(伊丹)の両空港からもシャトルバス(要予約)が出る。

 舞洲(まいしま)(大阪市此花区)、堺、尼崎(兵庫県)の3カ所には自家用車を止める「パーク・アンド・ライド」駐車場も整備。予約すれば、駐車場から会場まで専用シャトルバスを利用できる。

 水素燃料電池船などの旅客船は夢洲の浮桟橋に到着後、会場行きのシャトルバスに乗り換える。

 詳細は日本国際博覧会協会のホームページ(https://www.transport.expo2025.or.jp/route/)。

毎日新聞

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